森達也監督、初の劇映画 キネマ旬報ベスト・テン第4位に―「福田村事件」
ブルーレイの特典映像であるメイキングは、戦火のバグダッドなど各地で現地取材を行ってきたフリージャーナリストの綿井健陽が手がけている。現場で森が俳優たちに、今この人はどういう状況で、どういう気持ちでこの場にいるのか、それがどう変化していくのか、役の気持ちをとにかくつぶさに丁寧に、言葉で伝えようとしていた姿が印象に残った。 映画を見終えてふと、森の著作のタイトルでもある「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」という言葉を思い出した。これ自体が逆説的な意味合いを持つフレーズではあるものの、不安にかられ大義を御旗に暴走する集団心理の恐怖を描いた「福田村事件」という作品もまた、逆説的にこの言葉を信じたくなる、信じさせてくれる映画なのだと思えた。 文=進藤良彦 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2024年4月号より転載)
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