池袋で10年、スペシャルティコーヒーを提供し続ける「COFFEE VALLEY」
【&M連載】口福のコーヒー 希少性の高いコーヒー豆を個性に合わせて自家焙煎
2014年にオープンし、今年で10年を迎える池袋発のスペシャルティコーヒー専門店「COFFEE VALLEY」。表通りから一本入った細い路地にありながら、客足が途切れることはほとんどなく、休日には列ができる人気店だ。店は1階から3階まであり、3階は焙煎(ばいせん)所を兼ねたカフェスペースになっている。店内は決して広くはないが、センスのいいインテリアで居心地もいい。好みの豆を選んでハンドドリップを注文すると、店の奥で豆を挽(ひ)くところから、自分のコーヒーが入るまでのパフォーマンスを見ることができる。 【画像】もっと写真を見る(9枚) オーナーの小池司さんとコーヒーの出会いは、大学卒業後、ワーキングホリデーで訪れていたイギリス。当時はまだ珍しかったスペシャルティコーヒー専門店で飲んだエスプレッソだそう。それ以前は、ほとんどコーヒーを飲むことがなかったにもかかわらず、そのエスプレッソにほれ込み、数日後にはその店で働くことに。 ところが、バリスタをまねて同じようにコーヒーを淹(い)れてみるのに、なぜか同じようにおいしくならない。それがどうしてなのか、その理由を探しているうちに、どんどんコーヒーにのめりこんでいったという。帰国後も、コーヒー熱は冷めず、渋谷のコーヒー店で働きながらさらに技を磨き、NYで行われたラテアートの世界大会で4位の実力者となった。とにかくコーヒーは面白い。だからこそその魅力を多くの人に知ってもらいたいという。 スペシャルティコーヒー専門店を掲げているが、それはこちらの意思表明に過ぎず、利用するお客さんがカフェと思えばそれを覆すことはしない。使いたいように使ってもらえたらそれでいいと小池さん。専門店だと主張すると間口を狭くしてしまい、訪れる人も限られる。自分が経験したように、コーヒーの魅力に気づくきっかけとなる店でありたいという。 扱う豆はスペシャルティコーヒーの基準を満たした、上位5パーセントの希少性の高いコーヒー豆。すべて小池さんがこれだと選んだ生豆で、生産者に会いに海外の農園まで出向くこともある。焙煎の幅は広く、浅煎りから深煎りまで、豆の個性に合わせたプロファイルで、店の3階で自家焙煎している。 コーヒー初心者なら、まずは「3PEAKS」(スリーピークス)を。その日のおすすめの豆をドリップ、マキアート、エスプレッソで淹れた、三つのデミタスカップで楽しめる。個性を知って自分の好きなコーヒーに出会ってほしい。エスプレッソは飲みなれていなくて、残す人もいるけれど、それはそれでいい。わからないことがあれば、なんでもスタッフに相談してほしいという。 トーストやスイーツなどフードの種類も豊富で、自身も大ファンだという江古田の「パーラー江古田」の全粒粉食パンをトーストで提供している。驚くほどもっちりとしていて香ばしくて、コーヒーとの相性も抜群だった。ゆで卵付きのシンプルなトーストのほか、桜あんとエシレバターを使ったあんバターや、春野菜のグリルが載ったものなど、シーズナリーメニューもある。 自宅でおいしく淹れるコツも聞いてみた。ぜひグラインダーを購入して、挽きたてを味わってほしい。豆本来の個性が際立ち、アロマの甘さが引き出され、フレーバーの印象のよいコーヒーになる。挽きたてに勝るものはないですね。粉なら1週間、豆なら1カ月で使い切るのがベストとのことだ。 自分たちは、志高く、厳選したコーヒーを提供し続けるので、それによってコーヒー好きがどんどん増えて欲しい。世界中でコーヒー店の数は増えているが、自分がコーヒーに出会った頃、周りの人たちが持っていたほどの熱量はなくなってきた気がすると、小池さん。いろいろと試して自分の好みのコーヒーを見つけて、もっともっとコーヒーの魅力を感じてほしい。コーヒーを本気で愛するCOFFEE VALLEYは、自分なりの楽しみ方で、コーヒーが楽しめる理想形の店だ。 COFFEE VALLEY(コーヒーバレー) 東京都豊島区南池袋2-26-3 営業時間:平日8:00~20:00、土日祝9:00~20:00 ※変更の可能性あり 定休日:なし 03-6907-1173 https://coffeevalley.jp/ ■著者プロフィール 熊野由佳 ライター&エディター 徳島県出身。外資系ジュエリーブランドのPRを10年以上経験した後にフリーエディターに。雑誌やWebを中心に、旅、食、カルチャーなどをテーマに執筆中。無類の食べもの好きでもあり、おいしい店を探し当てる超(?)能力に恵まれている。自分の納得した店だけを紹介すべく、「実食主義」を貫く。2020年~2024年には「口福のカレー」を連載し、96店を実食した。カレーに勝るとも劣らないコーヒー好きが高じて、2年前からインド発コーヒーブランドの広報も担当。新連載「口福のコーヒー」では、コーヒーをもっと楽しむための耳寄りな情報を発信中。
朝日新聞社