９３年名古屋場所千秋楽、優勝決定戦となる巴戦で、対戦相手を決めるくじを引く（左から）若ノ花、貴ノ花、曙さん

　大相撲の第６４代横綱でプロ格闘家としても活躍した曙太郎（米国名チャド・ローウェン）さんが、心不全のため、４月上旬に東京近郊の病院で死去していたことが１１日、分かった。５４歳だった。２０１７年にプロレスの遠征先で倒れてから入院生活を送り、リハビリに励んでいたが、容体が急変した。ハワイ・オアフ島出身、２０３センチの巨漢で史上初の外国出身横綱となり、同期生の若乃花、貴乃花の“若貴兄弟”と１９９０年代の相撲ブームを盛り上げた。ライバルであり、盟友だった元横綱・貴乃花の花田光司氏（５１）が１１日、所属事務所を通じてコメントを発表した。１９８８年の初土俵以降、切磋琢磨（せっさたくま）した曙さんの逝去に際し「百折不撓」（ひゃくせつふとう）の言葉を寄せた。 【写真】９３年名古屋場所千秋楽、優勝決定戦となる巴戦のくじ引き 　２人の関係は新弟子時代から始まっていた。１９８８年春場所の新弟子検査は１０４人が受検。その中にいたのが、のちに横綱になるチャド・ローウェン（曙）、勝（３代目若乃花、虎上）さん、光司（貴乃花）さんだった。新弟子が大相撲の基礎を学ぶ相撲教習所では、２面の土俵を使って申し合いもある。２人はしのぎを削っていた。 　元横綱・貴乃花の光司さんは「数々の闘いの思い出がありますが、相撲教習所に半年間通った頃の稽古の思い出が出てきます。私たちはたけだけしく取組に励みました」と振り返る。強豪だった明大中野中相撲部で基礎を身につけている光司さんにとって、初心者ながら２００センチ超の巨体だった曙さんは大きく感じただろう。体と負けん気をぶつけ合った。 　９０年夏場所、１７歳８か月での新入幕を果たし、９２年初場所では１９歳５か月の幕内優勝と次々に当時の史上最年少記録を塗り替えていったが、先に大関、横綱へ昇進していたのは曙さんだった。兄は「体の大きい相手には負けたくない」と闘志をむき出しにして向かっていったが、弟も同じ気持ちだった。 　通算の対戦成績は２１勝２１敗の五分。９３年名古屋から３連覇の曙さんを翌９４年初場所で止め、逆に９４年秋場所から３連覇を翌９５年春場所で曙さんに止められた。横綱昇進を決めた９４年九州場所の千秋楽では豪快な上手投げで曙さんをねじ伏せて、大関としては５７年ぶりとなる２場所連続の全勝優勝を決めた一番は、名勝負として語り継がれる。 　自身の大関昇進時に「不撓不屈（ふとうふくつ）」という四字熟語を口上に込めた光司さんは「百折不撓の人生観だったと思いますが、これからは身を楽にして安らかに」とライバルの突然の死を悼んだ。