「花酵母」のお酒 次々と登場 香り楽しむ若者や女性へ提案
「オール愛媛」の日本酒は初
花から取った「花酵母」で醸造した日本酒やカクテルなどのアルコール飲料が続々と登場している。さまざまな香りが楽しめるのが特徴だ。地域を代表する花を使い、花をモチーフにしたラベルで若年層や女性、海外に向けて売り出す。若者を中心にアルコール離れが進む中、特別感のあるデザインでギフトなどに選んでもらおうと期待する。 【画像】花酵母で醸造した米焼酎を使ったカクテル 愛媛県酒造組合は、県オリジナル品種のピンクのデルフィニウム「さくらひめ」から産官学の共同研究で分離した「愛媛さくらひめ酵母」を使用し、日本酒「愛媛さくらひめシリーズ」を展開する。県内22蔵元(くらもと)が参加し、県全体で統一した酵母で日本酒を造るのは初めて。米など県産の原料を使い、“オール愛媛”で2023年から販売する。 花酵母には醸造後の香りなどの特徴が違う4タイプがあり、各蔵元が選ぶ。どの酵母を使ったか分かるようにボトルにシールを貼って選びやすくした。ラベルは、花をモチーフにするなど若年層や女性向けのデザインを意識。昨年は台湾で販促するなど、輸出にも力を入れる。 同シリーズに参加する水口酒造は、「仁喜多津純米吟醸酒さくらひめ酵母」を販売する。メインの720ミリリットルの他、300ミリリットルも用意。手頃なサイズで空港や土産店などで人気だ。同社の水口皓介専務は「洋梨や青リンゴのような香りが楽しめる日本酒」と話す。
手軽なギフトへカクテル
酒の開発や販売などを手がけるIchido(福島県富岡町)は、桜とツツジの花酵母で醸造した米焼酎を使ったカクテル「Enju」シリーズを開発した。同町の観光名所・夜の森の桜並木と、県内のツツジ園から採取した酵母を使う。花酵母のアルコール飲料は日本酒が主流だったが、差別化しようとカクテルに注目。化粧箱もあり、女性への手軽なギフトに選んでもらおうと提案する。 カクテルは、桜とツツジの2種類で、米や果汁など原材料は同県産や国産にこだわる。どちらもアルコール度数が5%と日本酒などに比べ低く、飲みやすく仕上げた。 Ichidoの渡邉優翔代表は「花とお酒のコラボで富岡町の雇用を創出し、地域づくりに貢献していきたい」と話す。同シリーズは同社の電子商取引(EC)サイトやセレクトショップ、百貨店などで30日に発売する予定だ。 花酵母は25年ほど前に東京農業大学で分離された。採取した花によって特徴があり、リンゴやメロンのような香りがするものもある。 東京農大花酵母研究会の木下大輔会長は「地元の花からとった酵母を使うことでその土地の特色を出しやすい」と話し、今後は醸造で定着していくとみる。(菅原裕美)
日本農業新聞