日本型コンビニとはビジネスモデルが対極…セブンより店舗の少ない企業が買収提案できる事情
閉鎖商圏ビジネスである駅ナカビジネス全般を運営する、JR東日本の2023年度流通・サービス事業が、売上高3794億円、営業利益540億円(営業利益率14.2%)と、リテールビジネスとしては高収益を維持しているのも、この閉鎖商圏を背景としているからである。 ■高速道路のサービスエリアの売店も似た構造 日本では、こうした駅ナカの他に、高速道路のサービスエリアビジネスが北米コンビニビジネスと似た構造であろう。過疎地におけるニーズ独占という意味では、北海道では圧倒的人気を誇るローカルコンビニ「セイコーマート」も過疎と冬期の移動制約を背景にした閉鎖商圏ビジネスという側面を持っている。
ほかにも、空港内やテーマパーク等のエンタメ施設内でのリテールビジネスなどが閉鎖商圏ビジネスといえるが、その市場は限定的であり、日本ではメジャーなビジネスモデルとは言えないだろう。 かつて、日本にも、閉鎖商圏と近い集客モデルで、消費者の移動制約を前提に一世を風靡した業態があった。それが総合スーパー業態である。高度成長を経て、日本にもモータリゼーションが全国に普及していくのが1980~1990年代だった。
この時代、地方でクルマが1家に1台普及していったのだが、当時のドライバーは男性が大半で、ファミリー層にとってクルマで買物というのは、「パパのいる土日に1週間のまとめ買いをする」という買物行動が主流となった。その際、ワンストップショッピングの受け皿となったのが、あらゆる商品を網羅した総合スーパーだ。これはドライバーが土日にしかいない時代の移動制約を背景とした、ある意味、過渡期の閉鎖商圏を前提とした隆盛であった。
その後、2000年代に買物の主役たる女性消費者が免許を持ち、軽自動車というパーソナルカーが普及すると、土日のパパドライバーは必須ではなくなった。機動力と選択の自由を得た女性消費者は、当時のロードサイドに勃興しつつあった各種専門店チェーン(ユニクロ、無印良品、ニトリ、ドラッグストア等々)のコスパを支持したため、総合スーパーの広く浅い平板な非食品売場は急速に衰退した。 移動手段などの制約を前提に来店動機を構成しているビジネスは、その制約が失われれば、競争力を失う。専門店集積であるショッピングモールにワンストップショッピングニーズの主役は移り、総合スーパーがどんどん減っている理由はここにある。