二世帯住宅に住んでいます。同居の親が亡くなった場合は相続税がかかるのでしょうか?
家の相続について考えたとき、相続税のことを心配する人も多いのではないでしょうか。特に二世帯住宅は、一般的な住宅に比べると規模が大きく、不動産としての評価額が高くなると相続税額にも影響が出てきます。 今回は、親が所有している土地に建っている住宅に、親と子の二世帯が同居しているケースを想定して、相続税や小規模宅地等の特例について説明します。
相続税とは
相続税とは、被相続人の財産を相続や遺贈で取得した場合にかかる税金です。 ここでの財産とは、金銭に見積もることができる経済価値のあるものすべてが対象となっており、現金、預貯金、株式などの有価証券だけでなく、土地や家屋などの不動産、生命保険金なども含まれます。また、ローンなどの負債はマイナスの財産として対象となります。
相続税における基礎控除額とは
相続税を計算する場合、遺産の総額や相続人の数などの確認が必要です。 まず相続税の対象となる遺産を計算しますが、前述したとおり、被相続人が保有していた現預金や不動産、生命保険金のほか、借入金など被相続人が負っていた債務も合計します。 また、一定の要件を満たす葬儀費用については、遺産の総額から差し引くことができます。 相続税には基礎控除があり、次の式で課税される遺産総額を算出します。 基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数) なお、被相続人に養子がいる場合は、法定相続人に含められる養子の数について実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなっています。 負債や葬儀費用を考慮した遺産の総額が、上記で計算した基礎控除額を超えている場合、超えた分について原則として相続税が課税されます。
小規模宅地等の特例とは
相続税額を計算するときの不動産の評価額は、原則として、土地は路線価をベースに、路線価が決められていない場所では倍率方式を用いて計算されます。また、家屋については固定資産税評価額となります。 相続開始の直前で、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族の事業用、または居住用に使われていた土地について一定の要件を満たす場合、一定の面積までは相続税の課税価額が減額になり、これを「小規模宅地等の特例」といいます。 小規模宅地等の特例の対象となる宅地等には次の4種類があります。 ●特定事業用宅地等 ●特定同族会社事業用宅地等 ●特定居住用宅地等 ●貸付事業用宅地等 それぞれに特例が適用できる要件が定められていますが、自宅としている二世帯住宅は特定居住用宅地等に該当し、その要件は次のようになっています。 ●取得者が被相続人と同居していた親族の場合、相続開始の直前から相続税の申告期限まで、引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること なお、取得者が被相続人の配偶者の場合、特に要件はありません。また、今回の事例とは異なりますが、取得者が別居の親族の場合、以下の定められた要件を満たす必要があります。 ●被相続人に配偶者や同居していた相続人がいない ●相続開始前3年以内に取得者やその配偶者、取得者の三親等内の親族または特別な関係のある一定の法人が、所有する家屋に居住したことがない ●相続開始時に取得者が居住している家屋をこれまで一度も所有したことがない ●対象となる宅地を相続開始から相続税の申告期限まで保有している など 要件の詳細については国税庁のホームページのほか、税理士などにご確認ください。 相続税を計算する上での減額率は、特例の対象となる4つの宅地の種類ごとに決められていますが、特定居住用宅地等だけの場合は次のとおりです。 ・特定居住用宅地等330平方メートルを上限として減額割合は80% 例として、被相続人である父親が保有する土地が面積300平方メートル(上限の面積以下)、相続税評価額が1億円で、その土地の上に二世帯住宅があり、父親と長男世帯が同居していたとします。 父親が亡くなり、同居している長男がこの土地を相続する場合、長男が相続税の申告期限まで保有していれば、小規模宅地等の特例が適用できます。 その結果、評価額が80%減額されて2000万円になるため、相続税を考える上で非常に大きな影響があるといえるでしょう。 小規模宅地等の特例を受けるためには、相続税の申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、評価額の計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど、一定の書類を添付する必要があります。 遺産分割協議などに時間がかかり、相続税の申告期限(原則として被相続人の死亡の日の翌日から10ヶ月以内)までに取得者が決まらない場合は、小規模宅地等の特例を適用することはできないので注意しましょう。