名作に触れて心豊かに 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」 音声ガイドナレーター・声優の速水奨さん
郡山市立美術館で6月23日まで開催している展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」では、音声ガイドのナレーターを声優の速水奨さんが務めている。収録時に意識したことや福島への思いなどを速水さんに聞いた。 ―どんなことを意識して音声ガイドを録音しましたか。 「今回は『ある画商』ということで参加しています。今までの音声ガイドでは、人格を感じさせないように解説に徹してきました。しかし、今回は見ているお客さんに絵を紹介する立場、さらに画商ということで『あわよくばお客さんにこの絵を売ろうか』という気持ちで声を吹き込みました。画商というキャラクター設定があったことで解説への重圧もなく肩の力を抜いて、柔らかく伝えられたと感じています」 ―「画商」の参考にしたキャラクターはいましたか。 「特定のキャラクターはいませんが、原田マハさんが書いた印象派画家などが出てくる小説を何冊か読んで、当時の空気や熱を感じながら取り組みました」 ―東京会場に足を運ばれたそうですが、お気に入りの作品はありますか。 「ポール・シニャックが描いた『ゴルフ・ジュアン』(1896年)が非常に印象に残っています。フランク・ウェストン・ベンソンの『ナタリー』(1917年)に描かれている女性のたたずまいもとても気に入っている。今回印象派の絵画に改めて出合って、写実性を強く感じました。モデルの内面を描こうとしたり、光の風合いを絵画に取り込むことで人間の心眼が捉えたものがとても饒舌(じょうぜつ)に語られているなと感じました」 ―美術館や博物館にはよく行きますか。 「休みができると、妻と2人で上野(東京都)などの美術館に足を運んでいます。空いた時間を利用して、なるべくいろんなものを見ようと心がけています。実はその中でも、定点観測的によく通っているのが『いわき市石炭・化石館ほるる』です」 ―福島にもよく来られているのですね。 「妻の両親がいわき市の出身で、よく足を運んでいます。ほかにも三春の滝桜など、福島のいろんな場所を訪れました。磐梯吾妻スカイラインから見た紅葉が本当に見事で、とても感動したことも印象に残っています」 ―福島の印象や、印象派展が開催されることについて思うことはありますか。 「震災直後、薄磯海岸(いわき市)を訪れて被害を受けた光景に心を痛めました。それでも年々復興していく姿を見て、たくましさを感じました。いつも福島の方たちは温かく迎えてくれて、柔らかく素朴、でもしんに強いたくましさを秘めていてすてきだなと感じています。自分が関わった印象派展が福島で開かれて、その音声ガイドを皆さんが聞くと思うとわくわくする。初めて印象派に触れた方が、美術に興味を持ち、日常が豊かになるきっかけとなれたらうれしい」 ―速水さんのファンや、印象派展を訪れる人にメッセージを。 「東京会場でも多くの人が来て非常に『好印象』です。印象派の絵画に触れて、訪れた皆さんの心のプラスとなり、豊かになっていくことを願っています。そしてその一助として、音声ガイドがお役に立てればこれに勝ることはない。時代の光を捉えた絵たちを、じっくりとご覧になってください」