おかず15品以上で700円、注文殺到の手作り弁当 広島市西区
広島市西区庚午地区と周辺の住民ボランティアが月1回、近隣のお年寄り向けにこしらえる弁当が好評だ。物価の高騰が続く中、野菜をたっぷり使った15品以上のおかずを詰め込み、税込み700円をキープ。定員いっぱいの80人から注文が入る。作り手側も70代中心だが、「地域に喜ばれるうちは続けよう」と腕を振るう。 【画像】おかず15品以上で700円の手作り弁当 月初めの火曜日。レンタルキッチンを備えたシェアハウス「庚午のおうち」に、早朝からメンバーが集まってくる。炊飯担当は自宅から炊きたてのご飯を持参。この日は鳥のカレー煮、ターサイのあえ物、カリフラワーのサラダなど17品を仕上げ、彩りよく詰めた。 正午には常連客が続々と訪れる。宅配担当は同じ頃、足が不自由な高齢者の家を車で回り始める。配達しがてら安否確認をするのだという。 献立は毎回、リーダー格の古川喜代美さん(72)が考える。仕出し業の夫を長年支えた経験を生かし、食材の調達と下準備も担う。旬の地場野菜をふんだんに使うのがこだわり。近所の酒屋が好意で使わせてくれる巨大な冷蔵庫をフル活用する。 メンバーは2014年の庚午のおうち開設時から1階のレンタルスペースで月2回、カフェを営んできた。当初からの中心メンバー戸川登美子さん(73)は「住民の憩いの場にしたくて」。古川さんをメンバーに迎えてからは食事も提供し、常連さんも約50人に増えた。 それがコロナ禍でストップし、「集まらなくても住民がつながれるように」と考えたのが弁当作りだった。20年7月に始めると評判を呼び、高齢の常連客向けに一括購入する美容院も出てきた。年末は「お一人様用おせち」も作る。税込み3500円で、120人から注文が入る人気ぶりだ。 キッチンには活気があふれるが、メンバーは最若手で60代後半。介護職員として夜勤も担う古川さんは「周りに『いでよ後継者』と呼びかけてます」と笑う。「でも私もまだ社会の役に立ちたいから」。戸川さんも「お客さんの喜ぶ顔が原動力。私たちも楽しいから続けられます」と話す。
中国新聞社