『海のはじまり』の有村架純、また無用に傷つく。心から笑える日が来るよう願う理由
夏が気を利かせるときはすばらしい気づかい
納骨の日は黒。海は遺骨の横にハマったようにちょこんと座り込み、遺骨入れに静かにしがみつく。ここでは誰ひとり激しい感情を誰も出さない。 納骨のあと、抜け殻のようになった海に、たぶん遺灰の入っているであろうネックレスを「水季」といって差し出す。「ママちっちゃい」と慈しむ海。 夏は、実家で、義弟・大和(木戸大聖)が小さな亡母の遺骨入れをお守りにしていることを知って、海にも何かお守りを贈りたかったのだろう。いつもなんもしてないような夏だが、気を利かせせるときはすばらしい気づかいを見せる。 水季のお墓参りに、海と夏は弥生を誘って出かける。そこで弥生が着ているのはブルーのブラウスだ。弥生のもやもやした心情を表して見える。
弥生は、また無用に傷ついてしまった
先に来ていた津野と弥生が一緒に帰り、かつて海を水季が連れて夏に会いに行ったとき、弥生がいたから、会わずに帰った事実を知らされた弥生は、また無用に傷ついてしまった気がする。 津野に、必死さを指摘され、行動を雑に「母性」で片付けようとされたうえ、水季にちょっと似ているとまで言われ、ひとつひとつは小さくてもあっちこっち斬りつけられているみたいなものだろう。 津野は津野で傷ついているが、悪気なく(むしろ良かれと思って)他者に踏み込み過ぎて、余計なことばかり言っている。唯一、「あの人(夏のこと)、水季、水季 うるさいですよね」だけは、弥生の共感を得たようだ。弥生と津野が心から笑える日が来ますように。 <文/木俣冬> 【木俣冬】 フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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