衆院解散は“買い”なのか 解散と株価の「蜜月関係」その底にあるものとは?
9月28日、衆院が解散する。言うまでもなく、株価は景気・企業収益を映し出す鏡だ。しかし、同時に、政治にも敏感に反応する「ポリティカル・ミラー」である。論より証拠。「28日に召集される臨時国会の冒頭で安倍首相が衆議院の解散に踏み切る意向」と新聞各紙がほぼ一斉に報じたのは9月18日。当日は3連休の最終日に当たっていたため、マーケットが開いた翌19日、日経平均株価は一時、411円高と急伸し、終値でも6月に付けた年初来高値を3カ月ぶりに更新した。首相の「解散」意向が起爆剤となったのだ。 なぜ、このような反応を示したのか。戦後の「解散」と株価の蜜月関係を振り返ると、その訳(わけ)が胸にストンと落ちる。 (解説は証券ジャーナリスト・駿河一平)
臨時国会の冒頭で28日、衆院が解散され、10月10日公示―22日投開票の方向で選挙戦は火ぶたを切る。準備が十分に整わないまま選挙戦本番に突入せざるを得ない野党は、「大義なき解散」「森友・加計問題隠しの解散」などと批判を浴びせるが、安倍首相は一向に動じない。 今回の解散・総選挙報道を拍手喝采で「ブラボー」の声をあげたのは与党よりも、むしろ株式市場だった。北朝鮮リスクで8月初旬以降、混迷を続け、9月8日に1万9274円と4カ月ぶりの低水準まで下落していた日経平均が、解散報道によって一気に盛り返す起爆剤となったからだ。
海外投資家、先物市場で記録的買い越し
新聞をはじめ大手メディアが安倍首相の「解散の意向」を大きく取り上げたのは9月18日。当日は休日だったため、株価の反応は翌19日に表れた。日経平均はその日、389円高を記録し、6月20日に付けた年初来高値2万230円を3カ月ぶりに更新。その後も高水準をキープしている。解散の動きに、迅速に反応したのは、「ヘッジファンドを中心とする足早の海外投資家」(銀行系証券)との見方が有力だ。 海外投資家は現物、先物の両市場で8月以降、大量の売り越しを続けてきたが、そのポジションを変え、買い転換したと言われている。実は、東証調べの投資部門別売買状況によれば、この解散報道が表面化する直前の9月第2週(11~15日)、外国人投資家は先物市場で突如、1兆2374億円と2014年11月以来の記録的な大量買い越しに動いている。 さらに9月第3週は、「ショート(売り)ポジションをかけていた欧州系ファンドが相次いで大口の買い注文を先物マーケットで執行した」(大手証券)という。「政治の変化」が先行き株価を一段と突き上げる、と読んだからにほかならない。 そうした読みの根っこにあるのは、「衆院が解散すると、少なくとも総選挙が終わるまでは株価は高い」という経験則だ。