【オーストラリア】日豪M&A、23年は不動産活発で過去最多53件
オーストラリアと日本のM&A(企業の合併・買収)取引成立件数は、昨年53件となり前年から3件増加し過去最多となった。オーストラリアの法律事務所ハーバート・スミス・フリーヒルズ(HSF)が、きょう15日に発表する「日豪投資リポート」で明らかにしている。エネルギー関連の取引が引き続き目立つ中、日本企業による地場BtoC(企業・消費者間取引)企業の買収が多く見られ、国内の消費者市場の魅力が強調された。また不動産投資が活発化していることも示された。【NNAオーストラリア編集部】 M&Aのうち、日本企業による買収は44件、売却は9件だった。このうち13件は不動産買収・投資だった。消費者・卸売り部門は11件、鉱業(重要・戦略的鉱物)や従来型エネルギー(石炭やガスなど)は10件だった。 オーストラリア市場への新規参入は12件で、このうち過半数を不動産部門が占めた。 BtoC分野での主な買収案件は、◇飲料大手キリンホールディングスによるビタミン剤大手ブラックモアズ買収(19億豪ドル、約1,900億円)◇セブン&アイ・ホールディングスによるオーストラリアのセブン―イレブン運営会社買収(17億1,000万豪ドル)◇花王によるスキンケア商品製造事業者ボンダイサンズ買収(4億5,000万豪ドル)――となった。 日本の対豪FDI(海外直接投資)は、1,338億豪ドルで過去最高となった。 ■BTRは着手しやすい投資 米不動産サービス大手CBREの調べでは、日本企業のオーストラリア不動産市場への投資金額は、昨年20億3,200万豪ドルとなり、他国・地域からの投資を上回った。HSFのリポートによれば、慢性的な住宅供給不足により、ビルド・トゥ・レント(BTR、賃貸専用住宅)開発事業など非従来型の不動産部門に対しても関心が高まっている。 日本では小規模物件ながらBTRのビジネスモデルが明確に確立されており、海外投資に着手しやすいという。直近では、住友林業がBTR開発事業に進出したと発表していた。 ■買収で自動化技術を確保 HSFは、昨年成約されたM&Aおよびパートナーシップ取引では、日本の大企業がオーストラリアの中小スタートアップ企業を買収するパターンが多かったと分析。スタートアップが開発した独自技術を獲得し、グローバルに展開する意図があると指摘した。 また、買収により人工知能(AI)やサイバーセキュリティー、クラウドなどの技術を確保する傾向は、コスト削減や自動化、イノベーションに焦点を置く企業で顕著だとした。日本貿易振興機構(ジェトロ)が今月公表した、オーストラリアに進出している日系企業の景況感調査でも、労働者不足や人件費高騰により自動化に関心を示した企業の割合は約8割と高水準となっていた。 HSFは、新しい投資トレンドとしては、医薬・医療部門、防衛・宇宙・サイバー事業、観光を挙げた。 2024年は、M&A取引成立件数が過去最多を更新すると予測。消費財、小売り、不動産、サービス業へのさらなる投資が見込まれるとした。