800PS超の“Gen4”にホンダも熱視線!? F1関係者が東京E-Prixで覆された印象とあらたな興味
3月末に東京ビッグサイトを中心に開催されたFIAフォーミュラE世界選手権の第5戦東京E-Prix。電動モータースポーツの最高峰が日本初上陸するということで、実はホンダ陣営のF1関係者もお忍びで観戦に訪れ、フォーミュラEに対するかつてのネガティブな印象が覆されたという。また、大会直前に概要が発表された、最大出力600kW(約816PS)となる計画の第4世代マシン“Gen4”には、ホンダ内からも熱い視線が向けられているようだ。 【関連画像】フォーミュラE最初のレースであるシーズン1開幕戦北京E-Prix Text:柴田久仁夫(SHIBATA Kunio) Photo:草皆茂則(KUSAKAI Shigenori)/Formula E/Red BullF1関係者の多くは、フォーミュラEにある種の偏見を抱いているように見える。そもそも彼らは、フォーミュラEにほとんど関心がない。たまに話題に上ることがあっても、ほとんどイロモノ扱いだ。以前、アラン・プロストに、「将来的にはF1も、電気100%になるのでは?」と訊いた時も、別の機会に「フォーミュラEが多くのファンを獲得して、F1と肩を並べるカテゴリーになるのでは?」と訊いた時も、いずれも答えは「絶対にありえない」だった。 ただしそれはコロナ禍以前の、4年以上も前のことだ。今だったらプロストも、ひょっとしたら考えを変えているかもしれない。そんなふうに思ったのは、僕自身が今回初めてフォーミュラE東京大会を取材し、単純に観戦して楽しかったし、最新鋭のマシンやユニークなレース形式に将来への可能性を感じたからだった。 プロストに限らず、F1関係者がフォーミュラEに対して一番物足りなく感じるのは、純粋なマシン性能であろう。 2017/18年のシーズン4まで使われたGen1(第1世代)マシンは、最低重量900kgとかなり重かった上に、最大パワーも200kW(約272PS)しかなかった。ダウンフォースも足りず、タイヤもプア。つまり、ストレートで遅く、コーナーでは鈍重、かつ不安定な挙動のクルマだった。しかもバッテリーの持続時間が短く、途中で乗り換える必要があった。たしかにこれでは、F1マシンと比べろというほうが無理だろう。 しかし、2018/19年のシーズン5からのGen2で(第2世代)バッテリーが大容量化され、パワーも最高速もアップ。1台のマシンでレース距離を走りきれるようになった。 そして昨年投入されたGen3では、ホイールベースはより短く、全高も低くなり、それ以上に車重が60kgも軽くなった。一方で最大パワーは350kw(476PS)に増加。最高速も320km/hと、ついに300kh/h超えを達成した。 もちろんこれでも、F1マシンのパフォーマンスにはまだまだ足元にも及ばない。しかもダウンフォースは相変わらず絶対的に足りない。しかし実際に観戦してみると、このダウンフォースの少なさは意外に気にならなかった。コーナリング中の不安定な挙動を、ドライバーが必死に立て直そうとする。その様子が、オン・ザ・レールのF1を見慣れてる身からすると、逆に新鮮だったりしたのだ。 レースフォーマットにしても、決勝での「アタックモード」はかなり面白かった。パワー増大にはレコードラインを外れる必要があり、その隙にオーバーテイクされる危険がある。そのあたりの駆け引きが、最終周まで続いた。「フォーミュラEは、エコラン競争」という先入観を覆すに十分だった。