センバツ高校野球 二松学舎、反撃及ばず 粘るプレー、拍手やまず /東京
第94回選抜高校野球大会第2日の20日、1回戦に臨んだ二松学舎大付(千代田区)は聖光学院(福島)に敗れた。二松学舎は40年前に市原勝人監督をエースとするチームで準優勝しており、それを超える優勝を狙ったが、悔しい結果となった。試合では投手陣が安定せず、9点を献上。打撃陣はクリーンアップなどの活躍で3点を返したが、追い上げきれなかった。試合後、観客からは健闘をたたえる拍手が惜しみなく送られた。【小林遥、小宅洋介】 試合は一回から苦しい展開となった。試合後に「気持ちに余裕がなかった」と振り返った先発の布施は、先頭打者に四球で出塁を許すと、その後も四死球を重ねるなど、この回に3点を奪われた。布施の父智彦さん(48)は「まだまだこれから。落ち着いて、いつもの自分らしい投球スタイルを貫いてほしい」と見守った。 その後はしばらく相手に追加点を許さず、四回の攻撃では3番大矢が中前打で出塁。後続打者の打席で捕逸の間に本塁へと生還し、1点を返した。大矢の父洋丈さん(50)は、「夢にまで見た甲子園でヒットを打ってくれたことが、親としてうれしい」と笑顔で話した。 五回、相手に2点の追加点を許すと布施に代わって辻が登板。智彦さんは「ここからはチームのため、ベンチから仲間をサポートしてほしい」と願った。辻の母泰代さん(53)は「(辻自身は)ずっと、けがで苦しい思いをしていた。登板できたのは本人が努力して頑張ったから。マウンドでは今まで苦しんだ分、楽しんでほしい」とエールを送った。 六回には、5番で主将の小林が意地の適時打で1点を加えた。小林の父和志さん(45)は「打ってくれて良かった。諦めずにプレーをして逆転してほしい」と祈った。 しかし、流れを引き寄せきれないまま、最終回に。スタンドでは学校関係者らが不安を打ち消すようにメガホンを打ち鳴らしたが、さらなる反撃はかなわなかった。 試合後、二松学舎の本城学(さとる)校長は「野球部のおかげで(甲子園に)来られた。それだけで感謝している。(得点は)1点ずつだったが、粘り強く頑張ってくれた。選手たちを誇りに思う」とたたえた。 ◇大舞台の応援実感 ○…一塁側アルプススタンドからは、二松学舎大付の応援部とチアリーダー部がエールを送った=写真・小林遥撮影。昨夏の甲子園と違い、今回は学校関係者以外もスタンドに入場できるようになったため、応援部部長の石井実さん(17)は「(関係者以外も一緒に)みんなで応援できてうれしい」と笑顔をみせた。また、チアリーダー部部長の東矢(とうや)百合香さん(17)も「今回は昨夏よりにぎやかで、(本来の)甲子園っぽい」と大舞台の雰囲気を実感していた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇4番、成長の2安打 二松学舎大付・瀬谷大夢(せや・ひろむ)中堅手(3年) 1―9。大きな点差を追う苦しい場面となった六回の攻撃、2死走者なしの場面でも4番打者は全く諦めていなかった。「後ろ(5番)には勝負強い小林が控えている。なんとしてでも塁に出る」 相手投手が投じたカーブを迷いなく振り抜くと、自慢の俊足で二塁に滑り込んだ。続く小林が期待通りに右前に安打を放つと、本塁に生還して2点目をもぎ取った。 しかしチーム全体は勢いに乗れず、最後まで本領を発揮できないまま夢はついえた。「悔しい思いが強い」。試合後のオンライン記者会見で唇をかんだ。 昨夏の甲子園では3番を任されたが、無安打に終わった。その雪辱を果たそうと、この冬は通常より重いバットを振って腕の筋力を鍛え上げた。 2度目の甲子園。20日の試合では4打数2安打と奮闘した。「昨夏よりも成長したと思う。でも、試合に勝たなければ意味が無い」。3度目の甲子園を目指し、さらなる成長を誓った。【加藤昌平】 〔多摩版〕