「実現したらスゴイことに…」ソニーがKADOKAWAを買収したい深いワケ
11月19日、ソニーグループがKADOKAWA買収に向け協議に入ったと報じられました。報道を受けてKADOKAWAの株価は2日連続のストップ高を記録するなど、各所で影響が出ています。なぜ今、ソニーはKADOKAWAの買収を検討しているのでしょうか?(百年コンサルティング代表 鈴木貴博) ● ソニーがKADOKAWA買収を検討? KADOKAWA株価は2日連続のストップ高に 11月19日、ソニーグループがKADOKAWA買収に向けた協議に入ったとロイターが報じました。報道を受けKADOKAWAの株価は2日連続のストップ高で一時46%も上昇する局面がありました。 このニュース、注意が必要なのはまだ交渉は初期段階だと報じられていて、ソニー側からの条件が何も提示されていないことです。 ソニーの場合、株価が急騰してM&Aが経済的に見合わないと考えると交渉を打ち切る可能性があります。投資家は今回のM&Aが成立しない可能性があることを念頭におく必要があるでしょう。 とはいえこの記事では、なぜKADOKAWAをソニーが必要とするのか?について考察させていただきます。具体的に企業戦略の3つの視点からその意義を解説してみたいと思います。 ● 視点1 本業と副業 もう25年前になりますが、当時、ソニーのCEOだった出井伸之さんからソニーの資本政策の考え方について教えていただいたことがありました。 出井さんらしいわかりやすい言葉を使った説明だったのですが、それはM&Aや出資について「本業と副業」で分けて考えるというものでした。
ひとことで言えば、ソニーの視点で本業だと考える出資はできれば100%出資して、その株はずっと保有していきたい。一方で副業としての出資の場合は業績がよくなり株価が上がれば売ってしまってキャピタルゲインを得ればいいというのです。 その当時、ソニーが資本政策としてかかえる大きな経営課題がありました。それが上場子会社のソニーミュージックでした。 それよりもさらに昔の盛田昭夫さんが会長だった時代に、ソニーは子会社のソニーミュージックを上場させました。上場するということは外部の株主に向けて株を売ることです。 当時の考えではソニーは家電が本業の会社であり、ソニーミュージックは副業という位置づけでした。ですから会社が大きくなったら、株を売ってキャピタルゲインを得ればいいと考えたのです。 ところが出井さんの時代になって、この過去の経営判断について転換する必要が生じました。デジタルの時代に入り、コンテンツがソニーの本業になる時代が見えてきていたのです。さらに問題だったのはプレイステーションのソニーコンピュータエンタテインメント(当時)がソニーミュージック主導で設立されていたことでした。 そこでソニーが行ったウルトラCが、ソニーとソニーミュージックの合併です。そしてそれ以降、ソニーグループにとっての本業は家電という定義ではなくなります。 ● ソニーはKADOKAWAを 「本業」と位置付けて出資を検討している さて、仮にKADOKAWAとの買収交渉がうまくまとまってKADOKAWAがソニーグループ入りすることになると仮定してみます。 今回の報道の重要な点は、その場合、ソニーはKADOKAWAを本業と位置付けて出資を検討していることになるという点です。 これまでもソニーグループはKADOKAWAの株式を約2%保有しているほか、KADOKAWAのゲーム子会社であるフロム・ソフトウェアにも子会社を通じて約14%出資していました。これはソニーにとっての本業であるゲーム&ネットワーク事業に関して、サイドビジネス的な位置づけでKADOKAWAに投資をしていたのです。