【訂正】『薬屋のひとりごと』OPに隠された“複雑な事情” 第2クールではついに猫猫の出生に迫る
TVアニメ『薬屋のひとりごと』の第2クールが1月に入って放送スタート。人さらいに遭って入った後宮で大活躍した猫猫が、解雇されて後宮を出てから美貌の宦官・壬氏に雇われる形で宮廷に戻り、前のように不思議な事件を解決していく展開でファンを引きつけている。オープニング主題歌もUru「アンビバレント」に変わり、テンポ良く切り替わっていく映像の中に気になる描写や人物がいくつも差し挟まれて、これからどうなっていくのかと期待を誘う。 【写真】猫目でこちらをじっと見つめる猫猫 1月6日に放送された第13話「外廷勤務」から、第14話「新しい淑妃」、第15話「膾」まで第2クールが放送されたが、猫猫の薬学や医学に関する知識が発揮され、不思議な事件が次々と解決されていく展開は第1クールの時と変わらず楽しむことができる。 後宮に売り飛ばされて下働きをさせられていた時とは違って、今度は壬氏に雇われる形での宮廷入り。前よりも良い立場になれたはずなのに、猫猫は受けた女官の試験に落ちてしまう。冴えた推理を次々に繰り出し、大人たちも驚く明晰さを見せていただけに、「なぜ落ちる?」とぼやく壬氏の気持ちも分からなくない。 もっとも、毒や薬の知識はあっても、女官に必要な詩歌や音曲にはまるで興味なさそうな猫猫のこと。心の中で「なぜ受かると思う?」と返した猫猫の言い分にも、それは確かにと納得できる。結果、後宮にいた時と同じ下女の身分で働き始めた猫猫は、今度は後宮だけでなく近隣で起こる奇妙な事件に首をつっこみ始める。 「新しい淑妃」では、倉庫で爆発が起こって中が焼けた現場に行き会わせ、顔見知りの李白という武官から事情を聞き、何が保管されていたかを調べて原因を解き明かす。「膾」では、ある官僚が河豚の膾(なます)を食べて昏睡状態に陥ったという事件が起こり、毒が含まれる内臓は入っていなくても、皮や身に毒が回ることもあるからと即答する。もっとも、料理人は膾に河豚は使っていないと言い張っていたため、何か謎があると調べた猫猫は、膾に込められたある企みに気付く。 豊富な知識で謎を解き明かしている猫猫を見ていると、女官の試験に「なぜ落ちる?」と言った壬氏と同じ思いがさらに強まるが、そうした偏った天才ぶりが、女性なら誰もが目を奪われる壬氏にまるで興味を示さず、むしろ邪険に扱う態度と相まって、猫猫という少女を魅力的に見せてくれている。キャラクター造形の勝利といったところだ。 ■“モノクル姿の男”羅漢と猫猫の関係性 猫猫の活躍はさらに続く。第16話「鉛」では、宮廷御用達の彫金細工師が亡くなって、3人の弟子の誰が後を継ぐか分からないままになっているという案件が、壬氏のところに持ち込まれる。遺言はあるにはあったが、思わせぶりな内容で誰かを指名したものではなかった。このままでは彫金細工師が持っていた秘伝も失われてしまう。壬氏のところに謎解きが得意な下女がいると噂になっていたこともあり、遺言の真相を突き止めてもらおうとした。 果たして猫猫は謎を解き明かせるのか? そんな興味をそそられる第16話だが、ここで気になるのが、壬氏に話を持ち込んだモノクル姿の男の存在だ。名は羅漢。軍師をやっているというが、物腰も言葉遣いもどこか怪しい。猫猫に何か含むところがあるらしく、「外廷勤務」でも軍部という建物の上から猫猫を見下ろし、笑みを浮かべる姿が描かれる。 この羅漢と猫猫との関係が、TVアニメ『薬屋のひとりごと』の第2クールにおける最も太い柱だ。日向夏の原作でも、『薬屋のひとりごと2』(ヒーロー文庫)に入っているエピソードをつなぐようにして、2人の関係が描かれていく。 猫猫は軍部に対して何かわだかまりを持っている様子。「外廷勤務」で猫猫が軍部を見上げるシーンでは、薬草を見つけてはしゃいだり、毒を試して快感に浸っていたりする時とはまるで違った冷ややかな声でつぶやく。もっとも、軍所属の李白に対しては普通に接しているから、軍人や軍という組織を毛嫌いしている訳ではなさそうだ。 羅漢という特定の個人に対して何か複雑な感情を抱いているのだとしたら、それはどういうものなのかが、第2クールの展開の中で明かされていく。同時に、羅漢がどうして猫猫に執着するのかも。それは、猫猫が緑青館という妓楼に出入りしている医師、羅門の養女として育ち、妓女たちと親しくしているのかといった理由とも関わってくる。 TVアニメ『薬屋のひとりごと』の第2クールは、猫猫の出生と生い立ちを明らかにし、猫猫が抱えている複雑な思いに迫るシリーズだとも言える。 Uruの「アンビバレント」が流れる新しいオープニングにも、そうした猫猫の事情や、羅漢という人物の狙いに近づいていく第2クールの展開の中で、意味を持ってくる映像が差し込まれている。碁盤の上に女性の手によって碁石が置かれていた場面が、次の瞬間、布の上に包帯が巻かれた手で小石が置かれる場面に切り替わる。その理由が分かった時、猫猫がただの毒好きで無愛想な面白少女ではなく、複雑な事情を背負った人間であることが分かるだろう。 ■オープニングで猫猫がみせる表情の意味 オープニングは他にも、『薬屋のひとりごと』シリーズにとって重要な要素を見せてくれている。背中を向けた壬氏の向こうで、猫猫が壬氏の下で働く高順、壬氏の侍女を務める水蓮とともに複雑な表情を見せている場面は、美貌で鳴る壬氏の顔にあることをしたら、何が起こるかを表したものだ。原作の『薬屋のひとりごと3』には、その威力が爆発するシーンが登場する。第2クールでは届きそうにないが、これだけ人気の作品だ。第2期としてTVアニメ化されて、ファンを喜ばせてくれるに違いない。 ずらりと並ぶ棺桶から、誰かが身を起こしている場面は、何か不気味な事件が起こりそうなことを予感させる。阿多妃の代わりに淑妃となった楼蘭妃も、同じ上級妃の玉葉妃や梨花妃、里樹妃と並んで紹介される映像の最後で、思わせぶりな視線を見せてただ者ではないことを感じさせる。現実には存在しないと言われている青い薔薇や、毒を持つダチュラ(チョウセンアサガオ)が曰くありげに映し出される点も大いに気になる。 そうした映像に絡んで起こった事態に猫猫が挑み、解き明かしていった先に訪れる猫猫と羅漢との“対決”の行方は? すべてが明かされる時を待ち遠しく思いながら、第2クールを観ていこう。 ※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(2024年1月27日16:34、リアルサウンド編集部) 誤:壬氏の下で働く顔順、壬氏の次女を務める睡蓮 正:壬氏の下で働く高順、壬氏の侍女を務める水蓮
タニグチリウイチ