「30センチ必要なのに厚さわずか3センチ」トンネル工事で「施工不良」専門家ら現地調査…浮き彫りになった『ずさんな工事の全容』「やはりずれてるなって」
和歌山県南部に建設中のトンネルで、天井部分のコンクリートの厚さが足りず空洞になるなど施工不良が起きていた問題で、専門家らが現地調査を行い、ボルトの位置などが当初の設計からずれているなど改めてずさんな工事の実態が浮き彫りとなりました。 【画像を見る】穴の向こうに空洞が見える トンネル内部と現地の様子
今回問題となっているのは、和歌山県の串本町と那智勝浦町の町境をつなぐ県道のトンネル「八郎山トンネル」です。全長は711m、南海トラフ地震などの災害時でのう回道路として整備中でトンネルはおととし9月に完成し、去年12月から供用開始のはずでした。 しかし、おととし12月、コンクリート内部に空洞が見つかりました。その後の調査で、空洞などの施工不良は少なくとも約8割の範囲に及び、本来の設計なら、コンクリートの厚さは30センチ必要なのに、最も薄いところで、1/10のわずか「3センチ」しかないことが判明しました。 県は今後の工法についての検討するため専門家らの「技術検討委員会」を設置しました。会議では、鋼材約700本のうち大半で本来設置されるべき場所からずれていることなどが判明。「ほぼ全面的に工事をやり直す必要がある」として、ほぼすべてのコンクリートをはがし工事をやり直す方針を決めました。 そして28日、専門家らが現地調査を行い、コンクリートをはがした状態のトンネルの状況などを確認しました。その後に行われた委員会で専門家らは「鋼材やボルトの位置がずれているなどずさんな面が確認できた」「元々の基本測量でミスをしているので、その通り間違った施工方法になっている」などと話しました。 また、委員会では調査報告書の骨子などが議論されました。県などによりますと、トンネル内のコンクリートをはがす工事は5月までに終わらせたいということです。
トンネル工事担当の建設会社が書類を改ざん…トンネルの検査は6回しか実施されず
トンネル工事は和歌山市にある「淺川組」と田辺市の「堀組」の共同事業体が実施していました。 県によりますと、浅川組は「覆工コンクリートの厚さは設計以上に確保されていた」という内容の書類を提出していたということですが、県の聞き取りに対して、「検査で薄いことは把握していた」と回答していて、書類を設計値以上に書き換えたことを認めたということです。 県ではトンネル工事の際にコンクリートの厚さを検査するよう定めています。その検査は、工事の進捗に応じて業者側から県への要請に基づいて行われるもので、検査は計136回必要でしたが大幅に下回る6回しか行われていなかったということです。