アメリカ出身の絵師が描く「日本の妖怪」に大反響 英、仏、西、伊…次々に翻訳 尽きない魅力「柴田勝家の亡霊」も
Kappa(河童)にNekomata(猫又)、Byakko(白虎)―。米国出身で、日本在住の妖怪絵師マット・マイヤーさん(40)が英語解説付きの自筆イラストで紹介するもののけたちが、世界で注目を集めている。古文書などの資料を調べ抜いた文章と、伝承の舞台を忠実に再現した浮世絵スタイルの画風が魅力だ。これまで500種類以上の妖怪を描き、まとめた図鑑は4冊。フランス語、スペイン語、イタリア語でも出版され、累計2万冊売れ、5冊目の図鑑発刊に向け精力的に作品作りに取り組む。作品はマイヤーさんのウェブサイトの他、福井県文書館でも楽しめる。酷暑の夏、アメリカ生まれながら日本の妖怪に「とりつかれた」マイヤーさんの作品で涼んでみてはどうだろう。(共同通信=西野開) ▽The Night Parade of One Hundred Demons(百鬼夜行)を刊行 マイヤーさんは、米・ニュージャージー州出身。美術大学在学中に浮世絵など日本の美術に関心を持ち、2004年に初めて来日し、金沢市に1カ月間滞在した。子どもたちが歌舞伎を演じる地元のまつりに参加した際、真っ白の背景に、隈取りした顔をわずか4本の筆の線で描いたポスターに目を奪われた。「日本のアートはシンプルだけどインパクトがある」。日本文化に一層魅力を感じるようになった。大学卒業後、07年から英語教師として福井県越前市へ移住。09年には、アーティストとして活動を始め、米国の風景を浮世絵風に描いたり、テレビゲームのイラスト制作の依頼を受けたりした。
初めて妖怪を題材にしたのは09年10月。ハロウィーンで「日本のモンスターを紹介しよう」と『画図百鬼夜行』など妖怪画で有名な浮世絵師鳥山石燕(1712年~1788年)をはじめ、江戸時代の妖怪に関する絵巻を読み込んだ。詳細なリサーチを踏まえ、自身のブログで1日1枚、妖怪の絵を英語の解説とともに掲載したところ、海外から100件を超えるコメントが付いた。 翌年も同じようにブログで載せると、コメントはさらに増えた。英語で妖怪を取り上げた媒体は珍しく、「日本に関心のある外国人らも知りたいのだろう」と手応えを感じた。「本にしてほしい」との声に押され、12年に100種類以上の妖怪を絵と英文で紹介した初の図鑑『The Night Parade of One Hundred Demons』(百鬼夜行)を発刊した。予想以上の売れ行きで、その後も約100種類ごとにまとめ、次々と図鑑を刊行。2015年からは「Yokai.com」というサイトで図鑑と同様の妖怪を紹介している。