神様の一泊旅行 伝統行事「隼人浜下り」 今年は異変も・・ 鹿児島・霧島市
鹿児島テレビ
郷土色豊かな秋の伝統行事のひとつに壮大な武者行列で知られる、鹿児島県霧島市の隼人浜下りがあります。 鹿児島神宮の神がみこしに乗って、年に一度の一泊旅行にでかけるという祭りの様子を取材しました。 静まりかえる月夜の境内に姿を現す神職たち。 霧島市の鹿児島神宮では、秋の伝統行事「隼人浜下り」を前に、本殿にまつる神をみこしに移す神事が行われました。 神の名は、神話では山幸彦と呼ばれる彦火火出見尊。 空のみこしが本殿に上げられますが、神を乗せる瞬間は、神職以外は見ることすらも許されない厳かな儀式です。 神が乗り込んだみこしは、静かに11月8日の出発を待ちます。 一夜明けて… 隼人浜下りは、山幸彦が海の神に会うため、年に一度だけ社を出て海岸に向かう行事です。 神職や氏子たちは行列を作って神様を案内します。 鹿児島神宮の境内では、実行委員会のメンバーが出発の支度を進めていました。 「どなたか上の方を見てください」 「大丈夫」 「下げましょうか」 「下げて!」 ところが思わぬ事態が起きます。 時折、雷雨も交じる不安定な天候で、急きょ、武者行列は中止が決定。 それでも、海に出かける神様の一泊旅行をなんとか実現しようと、みこしには雨よけがかぶせられ、車の荷台でみこしが運ばれることになりました。 鹿児島神宮・幸野珍廣宮司 「車でお連れするのは申し訳なくて。現代的なお祭りになってしまうけど、古式ゆかしくお仕えせねばならないのを」 この映像は今から25年前の浜下りの様子です。 神様が乗ったみこしの前後に、総勢400人ほどの武者行列や雅楽の演奏隊が続き、沿道は大勢の人が神様の旅の往来をもてなしています。 1000年以上の歴史を持つとされる浜下りですが、この長い歴史の中で、神様が車で旅をするのは、2024年が初めてではないかということです。 鹿児島神宮から山を下ること約4.5キロ。 みこしが到着した隼人港では浜下りの大切な行事、「放生会」が行われました。 これは、生き物を海に放って、霊をなぐさめる儀式です。 天気が少しずつ回復してきました。 旅の最終目的地まであとわずか。 武者役の2人が駆けつけました。 駆けつけた武者 「今年はようやく参加できるとのことだったがあいにくの雨で、残念なところですがちょっと夕方だけ参加すると」 駆けつけた武者 「甲冑を作って自分で出てみたいと長年思っていたから、神様をお守りする大事な役目なので頑張ります」 みこしは笛と太鼓の行列に先導され、神が一晩を過ごす最終目的地、神幸地にたどりつきました。 ここは、山幸彦が海の国から帰り着いた浜があったとされ、この場所で一晩、神様をもてなすのです。 隼人浜下り・芝幸宏実行委員長 「無事来ることができて良かったなと。歴史のあるロマンのある祭なので、多くの人に参加してもらえる祭に来年はしたい」 神楽「神賑わい」という祭りです。 地元の人々はここ、神幸地に年に1度だけ訪れる神様を太鼓の演奏や舞踊でもてなし、そして神様はお返しの餅まきで人々をねぎらいます。 伝統行事、隼人浜下り。 祈りと安らぎと共に、夜が更けていきます。
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