カブス藤川、復帰目前-成功のカギを握るバーティカル・ムーブメント
藤川球児は8日、テネシー州コダックにあるカブス傘下の2Aチームでリハビリ登板を行ない、2回を1安打、無失点に抑えた。 最速も93マイル(150キロ)でまずまず。カブスのデイル・スウェイム監督は6日、「問題がなければ、それでもう(リハビリ登板は)十分だろう」と話しており、これで9日になって、張りのあった右腕に違和感を覚えない限り、藤川のカブス復帰は確実だろう。 ただ、カブスに戻った藤川は通用するのか。 故障前に登板した5試合の成績は、4回1/3を投げて、8安打、6失点で、防御率は12.46。これは、ケガの影響なのか、それとも、日本の打者とメジャーの打者の差なのか。その答えが見えていない。 後者であるなら、藤川はメジャーへの適応を改めて迫られるが、それを示唆する見方もある。 4月6日、アトランタで1イニングを投げて3点を奪われた日の試合後、シカゴ・サンタイムスのゴードン・ウィッテマイヤー記者が、他チームのスカウトからこんな評価を聞いたそうだ。 「真っすぐが動かない。素直な球だ。あれでは、厳しいかもしれない」 ストレートが動かない。きれいな球。日本では理想とされ、藤川はその球で、長年阪神のクローザーとして君臨してきたが、そのスカウトの言葉は、藤川の代名詞を否定した。 あの日の登板を振り返ると、先頭のジャスティン・アップトンに二塁打されたのはカーブだったが、2人目、3人目の打者には、いずれも真っすぐをヒットにされていた。 4人目はストレートで空振りの三振を奪ったが、四球を挟んだ次の打者にも、速球をセンターに弾き返されている。 日本であれだけ藤川が、ストレートを連打されたことがあっただろうか。 藤川自身も、絶対的だった真っすぐへの信頼が揺らいだともとれる、コメントをしている。 故障者リストに入る引き金を引いてしまった12日のジャイアンツ戦では、救援に失敗。試合後、「同じボールを続けても同じ結果を生まない技術の高さというか、根拠は持てない」と話し、生命線であるストレートに関しては、今後も直球主体で行くか? と問われて、「タイミングによるでしょうね・・・」と曖昧に答えた。 ストレートをことごとく痛打された残像。彼はそれをどこかで引きずっていたのか。過去、こんなことがあったという。 阪神在籍時の昨年3月、開幕前にマリナーズとのオープン戦に登板。9回からマウンドに上がると、先頭のキャスパー・ウェルズに初球を本塁打された。今年のキャンプ後半、その一発を藤川はこう振り返っている。 「あのホームランで、本当に去年の開幕はおかしくなった。ピッチャー交代の初球で放り込まれたんで。あれが、怖くて」 日本の開幕戦では、9回に追いつかれた。藤川はウェルズに打たれた本塁打の残像を振り切れていなかった。 今回は、どうか。