国内企業が“瞑想”を取り入れてもパッとしない訳 日本人の行動力を上げる「新マインドフルネス」
その際、恩田さんは次のような話をしてくれました。 「欧米の文化は個人主義的に自立心を幼少から醸成するので、もともと前進思考のモメンタム的な素養を持っている人が多いということです。 そんな彼らにとっては、心を癒やす必要性には目が向いても、勢いづける必要性への関心は低かったのかもしれません。 そういった文化の違いを考慮しないで、欧米で流行りだからと丸呑み的に日本に持ち込んでも(逆輸入ですが)、やはり体感的にどこか違和感が生じてくるので定着が難しくなっているのかもしれませんね」
確かにこれも、マインドフルネスとモメンタムが分離してしまった一因のように思えます。 私から見ても、欧米から逆輸入されるかたちで日本に上陸したマインドフルネスは、欧米ほどには定着していないように感じられます。 ■日米における、マインドフルネスの違い その原因として考えられるのは、やはり恩田さんの見解のように、文化を背景とする日本人と欧米人のマインドの違いが壁になっているように思われます。 欧米人、特にグーグルやアップルの社員のようなエリート層は、高い自己肯定感を備えていて、基本的に「ポジティブ」な人が多く、人生においても「あれを達成したい」「これを目標にしている」といった強い目的意識を持っています。
つまり、彼らのモメンタムはもともと高い状態にあるということです。 そのため、一時的に心が疲れることがあったとしても、マインドフルネスによって心理的疲労(あるいは脳疲労)が回復すれば、自浄作用が働いて彼らは本来のポジティビティをすぐに取り戻します。 仕事においてもより活動的になり、業務効率の改善や生産性向上など、目に見える効果が表れてきます。 欧米企業がマインドフルネスに積極的なのも、こうした明らかなメリットを期待してのことと思われます。
彼らがマインドフルネスに期待しているのは、「癒やし」の効果自体よりも、それによって引き出される行動力、というわけです。 一方、日本人は欧米人に比べて仕事に対する目的意識が薄く、また自己肯定感も低いというデータが知られています。 目的意識のないところに、モメンタムは生じません。 目的意識のない人生とは、進むべき方向が見えない人生、何をしたらいいのかわからない人生でもあるからです。 そのため、マインドフルネスで心の疲れを軽減しただけでは、次の行動につながらない可能性があります。