那覇市繁多川、学校の隣接地で葬祭会館の建設進む 住民は不安 事業者は理解願う
家族葬専用施設
[リポート’25 那覇発] 那覇市繁多川で、葬祭会館の建設が進んでいる。市内では葬儀場不足が課題となっているが、建設地が住宅地内の学校に隣接する場所であることから、周辺住民から反対の声が上がっている。(社会部・玉城日向子) 【地図】葬祭会館の建設予定地
市に中止求める
葬祭会館の建設地は石田中学校前の真和志郵便局跡地。昨年11月に着工し、今年6月に完成予定。地上2階建てで、建築面積は193・05平方メートル(58・4坪)。 告別式用ではなく、家族葬専用の小規模施設になる。安置室を2室備え、通夜や法事を行う。一目で分かる霊きゅう車でなく一般車両を使い、住民感情に配慮するという。 ただ、中学校が近く、小学校の通学路にもなっている場所で「子どもたちの教育に影響を及ぼすのではないか」と地元住民の間に不安が広がっている。
理解願う事業者
事業者は昨年7月25日に那覇市に建設確認申請を提出。8月1日に許可された。 一方、住民が葬儀場建設計画を知ったのは9月上旬ごろ。事業者側に住民説明会の開催を要望し、同24日に開かれた。ただ案内があったのは現場に近接する住民のみだったという。 事業者は、建設計画が立てられた時点で、住民説明会を開かなかった理由を「葬儀場に限らず、3千平方メートル以上の建物を建てる場合には説明会を開く必要性があるが、今回はあてはまらなかった」と話した。 住民は10月30日に「繁多川地域の教育環境を守る有志の会」を結成。11月に市に建設中止を要請した。 有志の会の高江洲功代表世話人は「生活の中で冠婚葬祭は必要な行事だが、教育現場にあまりにも近いことに大きな疑問がある」と指摘した。 市まちなみ共創部の浦崎宮人部長は、葬祭会館は第二種中高層の建物に当たり予定地での建設は建築基準法に反していないと説明。「業者側に地域住民としっかり合意形成やコミュニケーションを取るように働きかける」と述べた。
本紙の取材に葬祭事業者の代表は「反対は受け止めているが、葬儀場の必要性も叫ばれている。周辺の環境や景観を損なわないように努める」と話した。 事業者と同会は12月に意見交換会を開催。住民からは「着工の計画が上がった時点で説明会を開催してほしかった」「子どもたちが明るい気持ちで周辺を歩けなくなる」との意見が上がった。同会には2700筆の反対署名が集まっているという。 事業者は「今後も建設的な話し合いを持ち、解決できる部分は取り組んでいく。建てたから終わりではなく、地域の方々に理解してもらえるよう、地域活動などにも参加する」と理解を求めた。