「ロス山火事でウクライナの将軍たちの豪邸焼失」とロシアが偽情報拡散
ソーシャルメディアでは風刺と偽情報の境界線は相変わらずあいまいだ。冗談の文脈で投稿された内容が、事実を伝える報道と誤解されることもある。「偽ニュース」の発信元がロシアのテレグラムチャンネルだった場合、その境界線はますますあいまいになる。 先週末にもそうした事例があった。米ロサンゼルスの痛ましい山火事をめぐりソーシャルメディアで、焼失した家屋にはウクライナの将官少なくとも8人が所有するものも含まれるという主張がなされた。 最初に発信したのはロシアのテレグラムチャンネル「ヴァイェーンヌイ・オボズレヴァーチェリ(軍事評論家)」だった。11日、こう投稿した。「ウクライナの情報筋によると、ロサンゼルスの大規模な山火事で、ウクライナ軍の高官が所有する豪邸8棟が焼失した。これらの不動産は総額9000万ドル(約140億円)にのぼり、開戦後にキーウへの経済援助の一環で西側から提供された資金で購入されたという」 ほかのユーザーらによるその後の投稿では、邸宅を失ったとされる人物のひとりに、ウクライナ軍の前総司令官で現在はウクライナの駐英大使を務めるヴァレリー・ザルジニー退役大将の名前も挙げられた。 ■風刺は方便の偽情報 テレグラムへの最初の投稿にはたしかに「сатира(風刺)」というハッシュタグが添えられていたが、ほかのユーザーによる再投稿ではこれが冗談だという言及はなくなっていた。これは、この話がフェイスブックやX(旧ツイッター)で拡散し始めたときも同じだった。そもそも、元の投稿が「風刺」だったとしても、どこがおもしろいのかはわかりにくい。おもしろがったのは、カリフォルニア州の破滅的な火災でウクライナ人が家を失うことに喜びをおぼえるようなロシア人フォロワーくらいだろう。 米ニューヘイブン大学のマシュー・シュミット准教授(国家安全保障・政治学)は「ウクライナの将軍がL.A.に不動産を所有しているという証拠はまったくありませんし、豪邸など言うまでもないでしょう」と言う。