注目の人気建築家が感銘を受けた世界のホテル、憧れの宿ベスト3
前田圭介さんは、広島に拠点を置く建築事務所UIDを主宰。自然との一体感を創出する建築作品は、常に注目を集めています。そんな前田さんの心をとらえたホテルや宿は、とてもユニークなラインナップです! 【Profile】 まえだ けいすけ/1974年広島県生まれ。1998年国士舘大学工学部建築学科卒業。2003年UID設立。2018年広島工業大学教授、早稲田大学芸術学校非常勤講師、2020年島根大学非常勤講師。2012年第24回JIA新人賞、2017年グッドデザイン賞金賞など受賞も多数。
1.前田さんが最も感銘を受けたホテル「コッターズ 1920s サファリ キャンプ」(ケニア)
ケニア南西部の国立保護区マサイマラにあるクラシックなサファリロッジ「コッターズ 1920s サファリ キャンプ」。その名のとおり、1920年代にこの地を英国が統治していた時代のラグジュアリーなロッジ・サファリのスタイルが再現されています。 前田さんは、コロナ禍前の夏休みに家族4人で訪れました。「以前、知人から野生動物の目は動物園の動物とはまったく違うのだと聞いて以来、“いつか本物の動物の目が見たい”と思っていたんです。滞在中は、クラシックなサファリカーに乗るゲームドライブというサファリツアーで、ライオンやヒョウ、バッファローなどを探しに行ったり、夜は満天の星を眺めたり…。キャンプ仕立ての客室は、品のある家具を設えただけで簡易的だったのですが、とても豊かな気持ちになることができて。ここでは建築的な要素はほぼ無いに等しいのに、自然環境でここまで豊かさをつくることができるのだと知りました」と前田さん。 「何よりも、厳しい自然界で“今”を生きる動物たちの生命が輝く大自然に身を置けたこと。ここでの体験は、私たちを取り巻く日常の“光害”や、利便性などの問題に気付かされる圧倒的な世界でした」と前田さん。人間にとって何が豊かなのか?を考えさせられる貴重な旅だったといいます。
2.前田さんが共感したホテルの1つ「ヘリタンス カンダラマ」(スリランカ)
多くの人から「バワが好きだと思う」といわれ続けてきたという前田さん。実際にジェフリー・バワの建築と向き合ってきた際の感想を次のように語ります。 「森と海それぞれに立つバワの建築を見て、自然は豊かさをもたらすものであるが、怖いものでもあると感じました。バワはあえてそういう所を選んでいる。その選択眼がすごいと思いました」
3.前田さんがずっと憧れ続けている宿「ちいおり 」(徳島)
訪問してからも、ずっと憧れ続けている存在だという宿がこちら。アレックス・カーが保存に尽力した築300年超の古民家です。徳島の秘境といわれる祖谷(いや)の渓谷にあるこの宿は、まさに理想郷。「自炊をしながら祖谷温泉や満天の星などを見たい」と再訪を熱望されています。 「アクセスが不便であればあるほど、旅の楽しみが増えます」という前田さん。未知なる土地で得られる気付きや感動は、建築家としての知見となって確かに前田さんのなかにインプットされているのでしょう。建築はもとより、訪問先の自然、文化まで深くコミットする前田さんの旅のスタイルからは学ぶべき点が多くあります。