魚が描かれたナスカの地上絵(2023年面タイプ地上絵、山形大学ナスカ研究所)

山形大学は9月24日、ナスカの地上絵303点を新たに発見したことを発表しました。 山形大学ナスカ研究所とIBM研究所の共同プロジェクトは、AIを活用してペルー・ナスカ台地の調査を行い、一昨年9月から昨年2月までの間に、人やラクダ科の家畜などの地上絵を発見しています。 【画像】「ナスカの地上絵」はどうやって描いたのか？　山形大学の最新研究が解明！ AIを用いた最新研究について、長年プロジェクトをリードしてきた山形大学の坂井正人氏が紹介します。 【本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明　マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(講談社現代新書)から抜粋・編集して作成したものです】

人工知能(AI)を用いた調査

図3-5a 人型(2019年面タイプ地上絵、山形大学ナスカ研究所)

山形大学は2004年にナスカ台地における地上絵の分布調査を開始した。 ナスカ台地は東京23区の3分の2の面積とほぼ同じ規模で、約400平方キロメートルある。人工衛星・飛行機・ドローンから撮影された画像を利用して、現地調査を実施したところ、前述(別記事「人工衛星やドローンを使った「最新研究」で発見された350点以上の「ナスカの地上絵」にはいったい何が描かれていたのか？」参照)のように350点以上の新しい地上絵を発見することができた。 しかし、ナスカ台地があまりにも広大なため、これまで調査できたのは台地全体の3分の1以下である。 そこで、研究を加速化するために、2018年から日本IBMの協力のもとで、人工知能(AI)を活用している。 人工知能で分析したのは、飛行機から撮影された高解像度の写真(最小分解能10センチメートル)だ。この解像度でナスカ台地全域を対象としたので、写真が膨大な量になった。そのすべてを人間の目で精査するためには、多大な労力と時間が必要になる。そこで、人工知能(深層学習)の物体検出の技術を利用することで、作業の効率化が可能なのかについて、日本IBMと一緒に実証実験を行った。 この実証実験は、線タイプの地上絵が集中しているナスカ台地北部で実施した。 人工知能に既知の動植物の地上絵を学習させたところ、航空写真のなかに新しい地上絵の候補を見つけだした。 これらの候補が含まれる航空写真をまず肉眼で検討して、有望な候補を選別した。次に選別された候補について現地調査したところ、未知の地上絵が4点見つかった。 それは人型(5メートル)、魚(19メートル)、鳥(17メートル)、脚(78メートル)の地上絵である(図3-5)。【※本書掲載の4点の図から2点を掲載。外部配信記事をお読みの方はぜひ現代新書サイトでご覧ください。】 * さらなる詳細は、青山和夫編『古代アメリカ文明　マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』で明かされています。