1枚で3回使える「リフィル処方箋」、誰でも対象?自己負担はいくら減る?
● 診療報酬改定の実施日が 今年から6月1日に変更された 前述のように、診療報酬は公的医療保険が適用された医療サービスや医薬品の価格のことだ。対象となっている医療技術や医薬品は約2万2000項目に及んでおり、その一つ一つに価格が付けられている。いわば、診療報酬は公的医療保険の「品目表」と「価格表」だが、単に「医療の価格」という意味合いにとどまらない性格を持っている。 日本の病院や診療所は「自由標榜制」で、医師は開業する診療科を自由に決めている。さらに、民間の病院や診療所を中心に行にした提供体制がとられているため、行政は医療機関に対して、開設する診療科や提供する医療サービスを強制したり、命令したりすることもできない。だが、医師が標榜したい診療科や医療サービスが、必ずしも国民にとって必要な医療とは限らない。 一方で、安定的な経営をするために、医療機関は高収入が見込める診療科や高い価格の医療サービスを取り入れる傾向が強い。そこで、その時々で必要な医療体制、充実させたい診療科などに高い診療報酬を付けることで、国が望む医療の提供体制に医療機関や薬局を誘導しているのだ。今年度は、リフィル処方箋を普及させるために診療報酬での誘導が行われている。 改定する診療報酬の項目や点数(価格)は、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)が2月上旬に答申を発表し、3月上旬に関係法令の告示や通知が出される。これまで、新しい診療報酬への改定は4月1日に行われていたが、このスケジュールだと、システム改修作業期間は1カ月半程度で、医療機関や薬局、システム改修の請負業者にとって大きな負荷がかかっていた。 そのため、今回から改定スケジュールが見直され、薬価は従来通り4月1日からだが、それ以外の診療報酬は6月1日から改定されることになった。
● リフィル処方箋なら1回の発行で 同じ薬を3回まで調剤してもらえる 処方箋は医師や歯科医師などが発行するもので、患者の治療に必要な医薬品の種類、量、服用方法などが記載された書類だ。この処方箋を持って薬局に行くと、そこに書かれている医薬品が調剤される。「リフィル(Refill)」とは、「詰め替える」や「補充する」という意味で、一度発行された処方箋を繰り返し使うのが「リフィル処方箋」だ。 2022年度の診療報酬改定で導入されたもので、処方箋の中の「リフィル可」という欄に医師がチェックを入れていれば、その処方箋を使って、一定期間内に同じ内容の薬を3回まで調剤してもらえる(投薬量の上限が定められた麻薬、向精神薬、新薬などを除く)。 医師に処方箋を書いてもらうための診療報酬は「処方箋料」といい、1回につき60点(7種類以上の内服薬、3種類以上の睡眠薬・抗うつ薬などを除く)が加算される。1点あたり10円をかけるので、医療機関の報酬は600円だ。 ただし、薬の処方は、医師が患者の診察をした上で必要だと判断した場合に、はじめて行われるものだ。そのため、「薬だけ出してもらいたい」という場合でも医療機関を受診しなければならず、初診料(291点)や再診料(75点)、外来感染対策向上加算(6点)など、その他の診療報酬も支払わなければならない。 医師の診察を受けることで、症状の悪化を防げたりすることもあるため、持病のある人にとって定期的な受診は大切なことだ。だが、生活習慣に関連する病気などの場合、医療機関を受診しても、医師から「いつものお薬を出しておきますね」と言われるだけで診療が終わってしまう人もいる。 処方箋を発行してもらうためだけに医療機関に行き、会計までの長い待ち時間を過ごさなければならないことに、疑問を感じている人もいるだろう。なかには、受付で「お薬だけお願いします」と言って、医師の診察を受けずに帰ってくる「お薬受診」をしている人もいるのではないだろうか。それでも、病院や診療所には、通常通りの医療費を支払わなければならない。 こうした状況を改善し、医薬品調剤の利便性を高めて医療費の削減をするために、リフィル処方箋が導入されることになったわけだが、医療収入が減ってしまう医療者団体の反発は大きかった。導入から1年たった2023年3月分の処方箋全体に対するリフィル処方箋の割合は、わずか0.05%で、ほとんど利用されていなかったのだ【厚生労働省中医協資料「リフィル処方箋の実施状況調査報告書(案)〈概要〉」の「処方箋料(リフィル)の算定回数の推移」より】。 だが、増え続ける国の医療費を削減するために、24年度はリフィル処方箋を普及していくためのてこ入れが行われることになった。