第93回選抜高校野球 東海大菅生、念願の初勝利 スタンド祝福「次も」 /東京
<センバツ高校野球> 第93回選抜高校野球大会第5日の24日、東海大菅生(あきる野市)は1回戦で聖カタリナ学園(愛媛)を4-3で振り切り、センバツ4回目の出場で初勝利を挙げた。鈴木悠平外野手(2年)の大会第1号と千田光一郎外野手(3年)の大会通算800号の2本塁打でリードし、投げては先発・鈴木泰成投手(2年)の速球がさえた。アルプススタンドから祝福の拍手が送られた。東海大菅生は第8日の27日第2試合(午前11時40分開始)で京都国際(京都)と対戦する。【林田奈々、酒井志帆】 初回のマウンドに上がったのは背番号11の鈴木泰成だった。185センチの長身から角度のある速球で先頭打者を三振に仕留め、初回を3者凡退に。父宗孝さん(47)は先発起用に「驚いた。大丈夫かなと思ったけど、意外に落ち着いている」。フォークを織り交ぜ、テンポ良くアウトを奪い、流れを作った。 打線はすぐ援護した。二回、鈴木悠平が先制本塁打。母徳美さん(43)は「本当に入ったわ!」。前日LINE(ライン)で「打つから」とメッセージが来たそうだ。三回は主将の栄塁唯(るい)(3年)の中前打に続き、3番・千田が高めのスライダーを左翼席に運んだ。「コンパクトに振ろうと思った」と振り返った。 だが四国大会準優勝の聖カタリナ学園も食い下がり、突き放せない。この日出番がなかったエース・本田峻也(3年)の兄敏起さん(26)は石川県の小松高時代、聖カタリナ学園の越智良平監督の指導を受けた。「(采配の)堅実さは変わっていない。当時の同級生は反対側のアルプススタンドにいて不思議な気持ち」と見守った。 試合は八回に小池祐吏(2年)の犠飛で加点し、4-1で最終回へ。昨年秋の都大会決勝でも抑えを務めた千田が登板した。ところが制球が乱れ、2点を奪われ、2死満塁で4番を迎えた。マウンドに駆け寄った遊撃の岩田一真(3年)が「ここは絶対、気持ちで勝つぞ」と千田の腰をたたき、発破をかけた。 「頑張って」。スタンドから祈りのつぶやきが漏れる中、三塁へのゴロを小池がつかみゲームセット。千田の父弘幸さん(49)は「心臓が止まるかと思った」と顔をほころばせた。応援団長の田上裕生さん(3年)は「練習の成果が出た。次も勝って日本一を取ってほしい」と話した。 ◇「本当に打つとは」 ○…大阪府出身の鈴木悠平外野手(2年)の応援に駆けつけた親族、友人ら35人の中に、叔母の栗巣弘美さん(39)がいた。手には甲子園での通算安打数を表示する「YU-METER」の青いボードがあった。栗巣さんらは甲子園に来る途中「1号が出たらいいね」と話し合っていたところ、いきなり大会第1号本塁打が飛び出し、「まさか、本当に打つなんて」と盛り上がった。栗巣さんは「毎試合、本塁打を打って」。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇重ねた努力、結実の一発 東海大菅生・鈴木悠平外野手(2年) 「思い切り行く」。二回、先頭打者で打席に入り、高めに浮いたスライダーを力いっぱい引っ張った。ポールを巻くように白球がスタンドに消えると、昨年秋には出番がなかった背番号17は小さなガッツポーズと共にダイヤモンドを駆け抜けた。「審判がぐるぐる手を回したのが見えて、気持ちよかった」 中学時代は通算32本塁打。1年生から試合に出るつもりだったが、思い通りにはいかなかった。同学年の選手の活躍を横目に夜もバットを振り続け、チャンスをつかんだ。 中学時代も3年の春、大阪府の支部予選決勝でサヨナラの好機に凡退し4番を外された。くさらず、自分の何が悪いのかノートに書いて、課題に取り組んだ。そして、夏の全国大会で場外本塁打を放つという結果を出した。 甲子園の一発は大会第1号で令和のセンバツ初本塁打となった。「持っている」と自らを評するが、「人一倍努力して、やってきた」から言える言葉だ。【林田奈々】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦第1試合 聖カタリナ学園 000000102=3 東海大菅生 01200001×=4 〔多摩版〕