宇垣美里「顔から血の気が引ききった」“ある事実”に気づいた瞬間一気に鳥肌が立ったワケ
アカデミー賞音響賞獲得も納得のすさまじい音響設計
アカデミー賞で音響賞を獲得したのも納得のすさまじい音響設計。まるでホラーのようなあの音こそがこの映画の肝だから、ぜひ映画館で鑑賞してほしい。逃げ出したくても逃げ出せない、という環境含め。 本や教科書からの知識で私はあの音が何を意味するのかを知っている。汽笛の音からは方々(ほうぼう)から連れてこられ、殺されゆくユダヤ人たちを、銃声や悲鳴からはアウシュビッツで行われた殺戮(さつりく)を。 残虐行為そのものは一切映らないのに、だからこそもう想像はとまらない。なんて歪(いびつ)な平穏だろう。
この家からは、この映画からは腐臭が漂っている
描かれているのは過去の出来事だけれど、その中で見せつけられるのは今も変わらぬ人の姿。 途中からはありもしない匂いに鼻を支配され、ずっと手で鼻を覆(おお)っていた。この家からは、この映画からは腐臭が漂っている。多分、それは私たちの日常にも。 でももう慣れてしまって気づきもしない。 『関心領域』 監督・脚本:ジョナサン・グレイザー 原作:マーティン・エイミス 撮影監督:ウカシュ・ジャル 出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー 配給:ハピネットファントム・スタジオ/2023年/アメリカ・イギリス・ポーランド映画/1時間45分 ©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved. 公開中 <文/宇垣美里> 【宇垣美里】 ’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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