村田諒太と最後に戦った男・竹迫司登が戦慄の92秒TKOで日本ミドル級新王者
竹迫は、ロンドン五輪金メダリスト、現WBA世界ミドル級王者、村田諒太(32、帝拳)のアマチュア時代、最後の対戦相手である。2012年8月26日、当時、龍谷大の竹迫は、和歌山で行われた国体近畿ブロック予選で、凱旋帰国試合となった村田と対戦した。ファンとマスコミでごったがえす異様な雰囲気の中、竹迫は1ラウンドに2度ダウンをとられ2ラウンド56秒にRSC負けした。プロで言うTKO負けである。 「村田さんの前に立つと何をしていいのかわからなかった。プレッシャーが強く、カウンターも体も強くて、おまけにガードが固いので、どこを打っていいのかもわからないままレフェリーに試合を止められました」 これまで竹迫がメディアに取り上げられるのは、この村田との因縁だけだった。 いつも「村田」の枕詞付きである。KO記録を伸ばすにつれ、それは自らのアイデンティティを否定されているように感じた。だから、この日、リング上で、将来の目標を聞かれたとき、あえて「世界」とは言わず「アジアのタイトル」と言った。「世界」と言えば、当然、現王者の村田の名前がまた出てくる。新チャンピオンなりのプライドである。 「いつも記事になるときは、村田さんの方がでかいんで……今日は、竹迫司登をメインでお願いします」 竹迫は、そう言って笑った。 「上へ上へいきたい。もう今年27歳なんで」 現在、OPBF東洋太平洋&WBOアジアの2冠王者は、秋山泰幸(38、ワタナベ)である。2試合連続KOの強打者は敬遠されるだろうが、斎田竜也会長は「受けてもらえるように交渉したい」という。 27歳で日本王者なら、世界王者は何歳で? そう尋ねると、竹迫は「28歳」と真顔で言う。 え? いきなり来年? 「ああ(笑)。来年は世界ランカーですね。世界王者は30歳になるまでにはなりたい」 世界でも有数のプロモート力を持つ帝拳でさえ、金メダリストの村田が世界王者になるまでに6年、14試合かかった。確かに厳しい世界だが、ワールドスポーツの井上岳志(28)は、Sウェルター級の日本、OPBF東洋太平洋、WBOアジアの3冠を手にして、4月26日に野中悠樹(40、井岡弘樹)とIBFのランキング2位決定戦を戦う。竹迫も「井上さんの3冠に刺激を受けている」というジムメイトが、そこで勝てば世界が見えてくる。敵地に乗り込んでのアンダードッグとしての挑戦になるだろうが、今の時代、決して夢物語ではない。