2025年ニュルブルクリンク24時間レースに復帰!? 「ニュルはモリゾウの原点」が意味するもの
■2007年の初挑戦で完走した時にモリゾウさんが見せた涙
成瀬弘さんと出会って以来、モリゾウさんはいいクルマをつくりたい。そのためにクルマを正しく評価できるドライバーになりたいと運転トレーニングを続けてきた。エンジニアではないモリゾウさんがいいクルマをつくるには、技術部と渡り合わなければならない。エンジニアとの共通言語を学ぶために、成瀬さんと一緒に必死に走りこんだ。 2007年当時モリゾウさんは副社長だったが、レースに出場することは「ボンボンの道楽」と見られ、また社業でも「どうせ御曹司のあなたには何もできないでしょう」というふうに見られていた。 成瀬弘さんの勧めでモリゾウさんがニュルブルクリンク24時間レースに参戦することを決めたのは、入社以来ずっと疎外感を抱え、「命がけで運転する姿を見てもらうことしか、自分を認めてもらうすべはない」と考えたからだ。 アルテッツアでニュルブルクリンク24時間レースをゴールした時にモリゾウさんは涙を流した。しかし、その涙は完走できたという喜びからだけではなかった。むしろ、誰からも応援されない悔しさ、何をやってもまともに見てもらえない悲しさがこみあげてきたからだという。 「『もっといいクルマをつくろうよ』と言い始めた原点は、この時の悔しさにあるのです」と後に本人は語っている。 その意味でニュルはモリゾウの原点なのだ。
■参戦車両はGRヤリスDAT、69歳モリゾウさんの挑戦
来年のニュルブルクリンク24時間レースにモリゾウさんが走るなら、69歳での挑戦となる。なぜ、モリゾウさんはニュルブルクリンク24時間レースに挑戦するのか?ひとつは原点回帰の想いがあるのだろう。 ルーキーレーシングを立ち上げ、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりを実践してきたモリゾウさんが、ニュルブルクリンク24時間レースに再び挑戦することは大きな意味がある。2007年ニュルブルクリンク24時間レースで誓った「もっといいクルマづくり」の思いを新たにし、現状に満足することなく、進化し続けることを意味するからだ。 いくつもの不具合が出るだろうし、リタイアとなってしまうかもしれない。それでも、2007年の初参戦がそうだったように、モリゾウさんが命がけで運転する姿がトヨタのクルマづくりはもちろん、世の中のクルマ好きに与える影響はとてつもなく大きいはずだ。 個人的には、成瀬弘さんに代わって現在マスタードライバーを務めるモリゾウさんが、ニュルブルクリンク24時間レースを走りながら、成瀬弘さんとどんな会話をするのか、聞いてみたいと思う。