「パニック症」発作を避けるための、自分なりの工夫は効果があるのか
パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。 【前編】「パニック症」発作へのすぐできる対処法とは。治すには服薬は必須? 前編<「パニック症」発作へのすぐできる対処法とは。治すには服薬は必須?>
発作を避けるための工夫は治療に役立ちますか?
パニック症の人はだれしも、最悪の事態を避けるために自分なりの工夫をしています。パニック発作が起こりそうなときや起こったときに、発作を避けたり、悪化するのを抑えたりするために、いつもしている行動を安全確保行動といいます。安全確保行動は、死の恐怖をやわらげ、最悪の事態を防ぐための工夫としておこなわれるものです。 工夫は悪いことではないのですが、「発作を避ける」という目下最大のメリットを得られる行動であるゆえ、自分で意図せぬうちに習慣化しがちです。安全確保行動がとれる状況でなければ、本来やるべきことができない、やりたいことをあきらめるといった事態に結びつくこともあります。長期的には、自分の行動を制限する足かせになっていくおそれがあるのです。 だからといって、いきなりすべての安全確保行動をやめる必要はありません。たとえば、不安を感じたときに呼吸を整えてリラックスをはかるのは安全確保行動ともいえますが、積極的に取り入れたい発作への対処法のひとつでもあります。
「これがなければダメ」とならないように
また、広場恐怖が強く、安全確保行動なしに外出できないという状態なら、安全確保行動を「やめない」という選択のほうが生活の幅を狭めずにすむでしょう。その場合も、「これは安全確保行動だ」という自覚があれば、別の対処法を考える余地が生まれ、無意識のうちにエスカレートしていく事態は避けやすくなります。 安全確保行動は、意識的に取り入れられることもあれば、とくに意識することなく、くり返されていることもあります。一見害のなさそうな工夫でも、「これがなければダメ」とならないようにしたいところです。
稲田 泰之(医師)