好機の打席でニヤリ 慶応・清原勝児の甲子園デビュー センバツ
◇センバツ第4日(21日)2回戦 ○仙台育英(宮城)2―1慶応(神奈川)● 高校野球ファンが期待した通り、絶好のチャンスで打順が巡ってくる。そういう意味で「もっている」と言えるのかもしれない。慶応のボルテージが最高潮になって打席が回ってきたのは、今大会注目の清原勝児だった。 【写真で比較】清原和博さん(1985年)と勝児さん(2022年) 1点を追う九回の土壇場で追いつき、延長十回から今大会初のタイブレークに突入した。2死満塁。うねるような大歓声を浴びながら打席に入った清原は、勝負を楽しむかのようにニヤリと笑った。「こんな人生ってなかなかない。楽しむしかない」 しかし、追い込まれた後の外角の変化球にバットは空を切り、思わずバットをたたきつけて悔しがった。無得点に終わり、最後はサヨナラ負け。「力不足だった」と肩を落とした。 父の和博さんは名門・PL学園(大阪)で1年生から4番を務め、5季連続で甲子園に出場した。春夏通算最多13本塁打を放ち、「甲子園の申し子」と呼ばれた。プロでも歴代5位の525本塁打を放った大打者だ。清原は和博さんの次男だけに、甲子園でどんな力を見せるのか。そのバットに注目が集まった。 この試合で最初に安打の快音を響かせたのは、清原だった。二回の第1打席。「ファーストストライクをたたきにいく」と決め、1ボールからの2球目の高めの直球を引っ張った。甲子園に金属音が響き渡ると、痛烈な打球が左前で弾み、左翼手が後逸する間に二塁に進んで力強く拳を振り下ろした(記録は安打と左翼手の失策)。「積極的に振っていくいいところが出た」と上々の甲子園デビューを飾った。 開会式で聖地に足を踏み入れ、中2日で初戦を迎えた。「近づくにつれてワクワクしていた」。初めて打席に立ち、アルプス席から大歓声が送られた。「これが甲子園なんだ」と実感した。終盤になるにつれて「集中して歓声が聞こえなくなった」。接戦でそれほど集中していた。 憧れの父が観戦する前で5打数1安打2三振。「(甲子園で活躍した)父の偉大さを痛感しました。でも、自分の中で一生記憶に残るいい試合ができた。絶対に夏に戻ってきます」。甲子園初アーチと初勝利はお預けとなったが、夢のような2時間39分だった。【浅妻博之】