1.0L 2気筒ターボ+電池で700km以上走るのに… メルセデス・ベンツ「レンジエクステンダーEV」開発中止か
実は作っていた エンジンで発電する長距離EV
ドイツの自動車メーカーであるメルセデス・ベンツは、内燃エンジンを発電機として使用し、電気モーターで駆動するレンジエクステンダーEVの開発テストを中止した。弊誌の取材で明らかになった。 【写真】先進的なパワートレインと空力性能で長距離走行を実現【メルセデス・ベンツEQS 450を写真で見る】 (24枚) バッテリーの残量が低下したときにエンジンで充電し、EVの航続距離と実用性を高めるというものだった。しかし、メルセデス・ベンツの車両開発に詳しい関係者によると、よりシンプルで費用対効果の高い従来型のバッテリーEVに集中することになったという。 「パッケージングと走行テストのために、既存モデルをベースにレンジエクステンダーのプロトタイプを作った。しかし結局のところ、レンジエクステンダーのドライブトレインは過渡的な技術であり、販売面での恩恵は比較的短期的で、生産コストも比較的高いという結論に達した」と関係者は語った。 プロトタイプにはEQSベースの車両もあった。1.0L 2気筒ターボガソリンエンジン(市販の2.0L 4気筒エンジン「M254」の半分)を搭載し、純粋に発電機として使用するとされている。 このエンジンは一定回転数での効率向上を目指し、ミラーサイクル技術を導入した。また、排気用のマフラーをフロントに配置している点が特徴で、リアまで長い配管を通す必要がない。 車輪を駆動するのは最高出力270psのリアマウントの電気モーターで、床下のリチウムイオンバッテリーから電力を供給する。バッテリー容量は市販EQSの約半分とされ、従来通りACおよびDC充電器に対応する。 バッテリー残量が減少し、充電器を利用できない場合にエンジンで発電する。 プロトタイプでは、バッテリーと燃料タンク(容量不明)を合わせた理論上の航続距離はEQS 450+の780kmを超えるという。 レンジエクステンダーEVは近年、世界最大のEV市場である中国でにわかに注目を集めている。地方都市や郊外では充電インフラが不足しているため、多くの自動車メーカーがレンジエクステンダーモデルを導入し始めている。 中国でレンジエクステンダーモデルを数多く販売しているのは理想汽車(Li Auto)だ。北京を拠点に2015年に設立された同社は、2023年に37万6030台を販売したが、それらすべてがレンジエクステンダー・ドライブトレインを搭載している。航続距離への不安を和らげ、十分な充電インフラがまだ存在しない地域で支持を得ている。
グレッグ・ケーブル(執筆) 林汰久也(翻訳)