<親中国・ロシアから米国へ>アンゴラの〝転換〟「罰する」から「善行の引き出し」へ変わるグローバルサウス獲得の手法
「一石四鳥」となった米国
内戦で反政府派を支持した米国とアンゴラ政府との関係が改善し、同政府は、鉄道プロジェクトについて、伝統的ドナーである中国の代わりに、米国主導のコンソーシアムを選択した。これは極めて良い話だ。 このディールにより、米国は希少金属の調達先を多角化でき、両国内で雇用を創出し、気候変動対策も進み、沿線開発で経済もさらに発展する、という「一石四鳥」だ。この記事によれば、両国関係の深化はそれに留まらず、隣国コンゴ民主共和国の紛争解決のためにアンゴラは真剣に協力しているし、ウクライナ戦争を巡って、伝統的支援国であるロシアに厳しい言葉を発しているという。 それ以上に大事なのは、ウクライナ戦争への対応から見ても、まだ世界の唯一の超大国でありながら、その力を使うだけの強い意志が減退しつつあるように見える米国、就中バイデン政権が、依然としてアフリカの将来的重要性を認め、個々の小さいが重要な国に対して選択的に関与していくだけの研ぎ澄まされた神経を有していることだ。 約2年前、中国が赤道ギニアに接近し、大西洋に面した初めての海軍基地に使える港の使用許可を働きかけていることを米国が察知し、赤道ギニアがそれを思いとどまるように種々の働きかけを行っているとの報道があった。その後、米側の努力が功を奏して、実際中国の基地使用は実現しなかったようだ。これも、米側の張り巡らされたアンテナがいまだ麻痺していないことを示す重要な例だが、米国はその後も引き続き頑張っている。
制裁から友好へ、日本も進むべき外交
実は、今回のアンゴラの件は、赤道ギニアの件以上に重要であるように思われる。なぜならば、経済支援によりウインウインの関係を築くという、今回の米国のアンゴラへのアプローチは、この記事でも指摘しているように、アンゴラのみならず「米国に無視され地政学的対立の捨て駒にされてきたと感じている国々への経済協力のモデル」にもなり得るからだ。 さらに言えば、「悪行に対して制裁する」というアプローチから、先方が望むなら、「相互に利益のある持続可能な関係」構築を実現できるという例になるからだ。米国は、外交手段として、そろそろ「制裁」を卒業すべき時期に来ているのではないだろうか。 それは、ウクライナの例を引くまでもなく、制裁の効果が益々限定的になっているということに加えて、今後の米国外交は、中露に比べて友人が多いという米国の強みを生かして、同盟国・同士国と役割分担しながら、グローバルサウスを含む「友人」を増やし、多数派を形成していくことに焦点を当てるべきであり、そのためには、「悪行を罰する制裁」では無く、「善行を引き出す協力」がますます重要になると思われるからだ。 日本も当然、この流れに乗るべきだろう。今後日米で、グローバルサウス諸国の内、どの国に優先的に関与していくかと、それらの優先国への期待とその実現のための協力の在り方についてすり合わせていく中で、是非とも連携を模索すべきだろう。
岡崎研究所