奥平大兼、宮世琉弥、窪塚愛流ら新世代に注目! 2024年に20歳新成人を迎える俳優たち
民法改正により2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられたが、多くの自治体では従来通り、20歳を対象に成人式を実施している。本稿では、2003年4月2日~2004年4月1日生まれの“新成人俳優”たちをピックアップし、彼らのこれまでの軌跡を辿っていく。 【写真】奥平大兼と鈴鹿央士がW主演を務める映画『PLAY!』 奥平大兼(2003年9月20日生まれ) この世代を語る上で外せないのは奥平大兼だ。映画『MOTHER マザー』では、演技未経験で挑んだオーディションで非常に難役なメインキャストに抜擢された。長澤まさみ演じる自堕落で自分の欲望にばかり忠実な毒親・秋子に育てられた息子・周平役を熱演し、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、第63回「ブルーリボン賞」などの新人俳優賞を総なめにした。何に対しても誰に対しても期待していない中で、母親や大人たちに裏切られ利用され続け、果てしなく底なしの地獄が更新され続けていく周平の虚ろさや諦め。それでも自分だけはなんとかまともさを手放すまいとする健気さや、“超えてはいけない一線”を意識する善良さも彼には滲む。だからこそ彼が選べなかった劣悪すぎる生育環境の残酷さが際立っていた。 テレビドラマ初出演作の『恋する母たち』(TBS系)では、吉田羊演じるバリキャリな母親の息子役を演じたが、言葉数は多くはないものの全てお見通しかのような妙に大人びたところのある高校生役を好演した。 そして再び彼の演技力が大きく注目されることになったのは、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系/以下『最高の教師』)での高校生・星崎透役だろう。自分の心が全く動かないモノクロに見える世界に辟易し、退屈な日々が変わらず続いていくことに静かに絶望する胸の内を誰にも明かせない。社会のくだらなさにも自分の異常さにも心底愛想を尽かせ持て余した虚無感を自分で飼い慣らし切れていない、世界との接点が危うく脆い難役を見事体現していた。 3月に公開が控えている映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』では、W主演を務める鈴鹿央士との共演が見られるようで、今から楽しみでしかたない。 宮世琉弥(2004年1月22日生まれ) 奥平と『恋する母たち』で共演し、仲里依紗演じるセレブ妻の息子役を演じたのが宮世琉弥だ。エリート弁護士だが妻にも子どもにも高圧的な父親を軽蔑し、自分が家族を守ると決意する非常に大人びた高校生・蒲原繁秋役を熱演。ラップ落語「まんじゅうこわい」を制作しラッパーとしてバズる役どころだったが、『パリピ孔明』(フジテレビ系)でも天才ラッパー・KABE太人役を好演した。宮世はキラキラとした学園ものの中心人物や王子様的なキャラクター、『君の花になる』(TBS系)でのボーイズユニットの最年少メンバー役はもちろんのこと、KABE太人のように高校時代クラスの隅っこにいて周囲とうまく溶け込めず、そのはけ口にラップを始めたような内向的な人物造詣も得意とする。 また、『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)での暴力団の三代目組長“ぼっちゃん”役では、悪戯っぽく人を試すような挑発的な眼差しと行き場のない寂しさを抱えるアンニュイな視線が入り混じる、アンバランスな役どころも見事に熱演していた。 こちらも3月には同じく2024年に20歳成人式を迎える原菜乃華(2003年8月26日生まれ)と共にW主演を務める映画『恋わずらいのエリー』が公開される。宮世はツンデレなキャラクターを担うようで、キラキラ王子の中に宿る人間臭さやちょっぴり残念なところも見せてくれそうだ。 窪塚愛流(2003年10月3日生まれ) 奥平同様、『最高の教師』で注目を集めたのが、クラスメイトの栖原竜太郎役を演じた窪塚愛流だ。ひょうひょうとしており立ち回りが抜群にうまく、誰とも角が立たずどのコミュニティにもすんなり溶け込めてしまう。自分の個性との付き合い方が上手く、周囲と同化はしていないが、自分の大事な部分は誰にも譲り渡すことなくパーソナルスペースを確保したまま他人と一緒にいることができる。しかし、本能的に面倒を回避して誰とも摩擦を起こさず過ごしてきたことに、少しの寂しさも感じているかのような栖原の中に起きる変化を、自然に見せてくれた。 『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)では、父親が自分の憧れの漫画家の魂と入れ替わりをしてしまう不思議な現象に見舞われる息子役を担っていた。窪塚の動じない雰囲気は、突拍子もない設定の作品の世界観にもよくマッチしていた。 3月には出演映画『ハピネス』の公開も控えており、ここからまた窪塚のさまざまな表情が見られそうで期待は高まるばかりだ。 日向亘(2004年3月18日生まれ) 全5話ながらも多くの視聴者を虜にしたのは『君となら恋をしてみても』(MBS/以下『なら恋』)で主演を務めた日向亘だ。『なら恋』では誰に対しても分け隔てなく世話好きで真っ直ぐな高校生・山菅龍司役を熱演。江ノ島での日常の中で龍司が転校生の海堂天(大倉空人)と惹かれ合っていく様子を丁寧に紡ぎ、まるで自然の移ろいかのように見せてくれた。龍司の眼差しからは誰のこともどんなことも拒絶することなく一度耳を傾けてみよう、受け入れてみようとする人としての豊穣な素地が滲み、彼が眼差せばそこがもう日向になるような温かさと安心感が終始存在した。また、日向は、2023年12月22日に最終回を迎えた『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)で、愛嬌たっぷりなパラリーガル・岩渕亮平役を好演していた。 人懐っこい役どころはもちろんだが、『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)では、医学部志望のクールでドライな一面もある高校生・和真役を演じ、そこから一転、大河ドラマ初出演作となった『どうする家康』(NHK総合)では、血気盛んな戦国屈指の人気武将・真田信繁役を体当たりで演じ、最終話の印象的なシーンを飾った。父・昌幸(佐藤浩市)と向き合うシーンでも、あの重厚感のある佐藤浩市の存在感にも霞むことなく対峙し、圧倒的なインパクトを残した。 既に独自の歩みをたのもしく邁進する彼らの、これからのさらなる飛躍に目が離せそうにない。
佳香(かこ)