本田圭佑が凱旋ゴールに秘めた思い「東京五輪出場に向けてまだまだ成長できる」
サンフレッチェ広島を応援しているスタンドから、その瞬間だけ歓声が湧きあがった。広島広域公園陸上競技場のピッチに、拍手も降り注いだ。閃光のように放たれ、ゴールの左隅に突き刺さった本田圭佑の凱旋弾が、敵味方の垣根を越えて大きな衝撃を与えた。 オーストラリア王者のメルボルン・ビクトリーFCをホームに迎えた、12日のACLグループリーグ第2戦。詰めかけた約9000人の広島サポーターの視線は、倒すべき相手のキャプテンと右インサイドハーフを務める、背番号「4」の一挙手一投足にも否が応でも注がれた。 迎えた後半26分。開始早々に許した先制点を追うメルボルンに、絶好のチャンスが訪れる。右サイドでMFアンソニー・レシオティスが放った縦パスに反応したFWジェームズ・トロイージが、広島のMF清水航平と競り合う素振りを見せながら、とっさにボールをスルーする。 虚を突かれ、棒立ちになった広島の選手たちをごぼう抜きにして、右サイドバックのストーム・ルーががら空きになった右サイドを駆けあがる。ゴール中央へ迫ってくるFWコスタ・バーバルーゼスをケアしようと、3バックで形成された広島の最終ライン全員も下がってきた。 しかし、広島の中盤が連動していない。ペナルティーエリア内に入ったあたりに、必然的に大きなスペースが生まれる。ゴールの匂いを嗅ぎ取った本田はスプリントを開始し、あらん限りのパワーを使って加速しながら、実は大きなフラストレーションを溜めていた。 「あの5分くらい前にトップ下へ移ってから一度もボールに触れず、ちょっと焦れていた。痺れを切らしていたタイミングであの場面が来たので、パスが来ると信じて、とりあえず走ろうと」 いい意味で予想を裏切ったルーは、マイナス方向へ絶妙のパスを折り返した。広島の最終ラインは誰も反応できない。ボランチの和田拓也が必死に間合いを詰めてきた眼前で、本田はスライディングしながら利き足の左足でヒット。同点ゴールを見届けると、すぐに自陣へ戻り始めた。