「誰のためのJRか?」9000億円もの利益は株主に還元…国民をないがしろにするJRの「今後」
「終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制はもう限界ではないか」 そんな思いを世界中の人々が抱えるなか、現実問題として地球温暖化が「資本主義など唯一永続可能な経済体制足りえない」ことを残酷なまでに示している。しかしその一方で、現状を追認するでも諦観を示すでもなく、夢物語でない現実に即したビジョンを示せる論者はいまだに現れない。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では「新自由主義の権化」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に資本主義の「教義」を問い直した『世界の賢人と語る「資本主義の先」』(井手壮平著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。 『世界の賢人と語る「資本主義の先」』連載第15回 『民間企業を妄信する日本…世界の潮流に逆行して「水道民営化」を進めたヤバすぎる信仰』より続く
J Rは誰のものか
関が指摘するように、たしかにJRは民営化の成功例だと広く考えられている。だが、それは民営化以前の国鉄が「親方日の丸」の官僚体質、赤字体質でサービスも悪かったことが理由として大きい。巨額の赤字を毎年垂れ流す状況から、現在のように少なくとも上場4社は安定した利益を上げられるようになったことそれ自体は、改善といっていいだろう。しかし、旧国鉄の問題は公営であるがゆえに必然的に起きた問題だと思われがちだが、パリの水道の事例を見てもわかるとおり、本来、それらは所有の形態とは切り離して考えるべき問題である。 JRが営利企業になったことで、駅舎内スペースの商業施設としての活用など、利用者の利便性向上につながった面もあるが、不採算路線は切り捨てられることになった。新型コロナの影響が表れる直前の2018年度(2019年3月期)決算で見ると、上場しているJR4社の純利益は、東日本が2952億円、東海が4387億円、西日本が1027億円、9州が492億円である。しかしそもそも、鉄道ほど公共性の高い事業がそれほど巨額の利益を上げる必要が本当にあるのだろうか。