U-20日本代表へ韓国観客から賞賛とブーイング。その裏にあった狙いとは
ゲームの様相が変わり始めたのは、後半25分ぐらいからだ。 イタリアが明らかに自陣に引いて守り、日本がそのブロックの外でボールを回し続けた。このときはまだ、イタリアに隙があれば攻め込む意思を日本は見せたが、後半40分くらいになると、ディフェンスラインとGKでボールを回すイタリアに対して、日本もボールを奪いに行かなくなった。ブーイングが激しくなったのは、この頃のことだ。 「(引き分けでもオーケーだと)僕が伝えました」 試合後、チームを率いる内山篤監督はそう明かした。 「2-2になった瞬間すかさず計算しました。で、勝ちにいかなくていいと。逆に怖かったのは、勝ちにいってしまうことと、相手のセットプレー(から失点すること)。いつの間にか相手も引き分けオーケーになった」 イタリア戦を迎えるにあたって選手たちにグループ内の状況を説明し、「最低でも引き分け」という話をしていたという指揮官は、こうも言った。 「正直な話、『勝てばいいんでしょ』というのが日本の選手たちの発想です。これをなんとか断ち切りたかった。勝ち抜くためにどう判断していくかっていうことが僕の一番の目標。この賢さが日本には足りない。中盤でのパスワークとか、コンパクトにやることは強みだけど、その中でゲームをいかにコントロールしてしたたかにやるか、勝ち点も含めて相手がどう出てくるか、そういうことを僕は一番求めたんです」 勝利を狙って強引に攻めれば、カウンターを浴びて失点する可能性も高まるし、そんなリスクを冒す必要はない。 重要なのは、引き分けでオーケーという状況で第3戦を戦えたこと。それは、南アフリカに勝利していたからであり、0-2からイタリアに追いついていたからこそ。上のステージに勝ち進むために、その状況や条件を最大限に生かすのは当然のことだろう。 ピッチの上の選手たちにも迷いはなかった。 「無理にこじ開けようとしてもカウンターを食らうだけやったんで、自分と原でコントロールしながらやっていました」と振り返った市丸は「僕のサッカー人生では今まで最後までピリピリしたというか、攻めて、攻められてっていう展開だったんですけど、両方とも攻めないっていうのは初めてやったんで、サッカーの深さというか、こういうサッカーもあるんやなって知りましたね」と納得の表情で語った。 一方、堂安も「あれもサッカーなんで。自分たちが上に行くための作戦というか、戦い方ですし、もちろん見ている人が楽しいプレーするのも大事ですけど、勝ち上がるためにはああいう戦い方も大事なのかなと思います」と胸を張った。 こうしてグループ3位で決勝トーナメント進出を決めた日本の次の対戦相手はベネズエラに決まった。 グループステージではドイツを2-0、メキシコを1-0で下しており、日本がグループステージ第2戦で戦ったウルグアイに匹敵する強敵なのは間違いないが、日本にとってここからはある意味、ボーナスステージでもある。不安やプレッシャーなど感じることなく、思い切ってぶつかっていけばいい。若き日本代表にとって、決勝トーナメントで見える新しい景色は、そのすべてが大きな経験になるはずだ。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)