疫病神よ、竜東から去れ 千代で「事の神送り」始まる【長野県】
長野県飯田下伊那地域で受け継がれている国選択無形民俗文化財「コト八日行事」の一つ「事の神送り」が7日、飯田市千代で始まった。子どもと大人が無病息災を願い、短冊を付けた笹竹を集落境まで運んだ。 疫病神を集落外に送り出す行事として、集落ごとに古くから続けており、竜東では昔から、地区と市村を越えたリレー方式で実施。千代を出発して、神之峰の西側を通るルートと東側を通るルートがあり、喬木村境まで送る。 出発地点の一つ、荻坪の神送りには、小学生3人と保護者、住民、区役員の計9人が参加。7日午後4時に集落の中心部にある県道247号(米川駄科停車場線)沿いの広場を出発して、龍江境までの約1キロを歩いた。 一行は「馬」「風の神」「事の神」などと書かれた短冊と、家族の身代わりを意味する髪の毛や爪を包んだ和紙をつるした笹竹を手に一列になって歩き、鉦と太鼓をはさんで「こ~との神送れ、そ~れそれ」と唱えた。 各家庭ではこの日に短冊を付けた笹竹で家の中を掃いておはらいしてから集まっていて、「馬」の字には「馬のように早く疫病が去ってほしい」という願いが込められているという。 片道20分の道中では、高齢者夫婦が行事の様子を見守ったり、笹竹を手に途中から参加する女性もいた。 一行が集落の外れに置いた笹竹は、ほかの集落のものと一緒に龍江から上久堅を経由して喬木村境まで送られる。 区長の篠田孝二さん(55)は「昔と比べると子どもの数は少なくなったが、にぎやかにできてよかった」と話した。 千代の野池では3日、子どもらが大数珠を回して疫病退散を願う「大将荒神」があった。 篠田さんによると、荻坪でも昭和以前までは大将荒神が行われ、県道沿いの荻坪観世音堂に大数珠が残っているという。