「部屋から出たがっている」は思い込み? 長野で猫の飼い方教室
トイレを嫌がっているサインは
猫が欲する環境については、(1)ごはんと水、(2)快適な環境、(3)遊び、(4)健康管理、(5)自由な行動の5つを満たしてやることが必要。このうちどれかが不十分だと猫が問題行動を起こすことがあるとしました。 例えばごはんと水を与える場所は猫のトイレから離れたところに。餌はできれば平たい皿で。猫が複数いる場合は、皿は1匹ずつに与え、皿は50センチほど離して置く。猫によっては食事中、お互いに見えない場所を好む場合もあるので、場所を移してやる。 トイレで失敗したりマーキングをする場合は、腎臓や膀胱(ぼうこう)、ホルモンの病気などのこともあるが、病気以外ではトイレ環境が良くなかったり、不安やストレスの場合も。トイレの環境は大切で、猫の体長の1.5倍ほどの大きさが理想。衣装ケースに砂を置いてトイレにしているケースもある。 臭いがトイレにこもるようなカバーがあっても嫌がることがある。完全に清潔なトイレでないと使わない猫もいる。近くにうるさい電化製品があったり、真っ暗な場所は嫌う。複数の猫を飼っている場合は、仲の良いグループの数のトイレに加えてもう1つトイレを置いてやる。3つのグループがあったらプラス1の4つのトイレを。 トイレを嫌がっているサインは、トイレの縁に立っている、短時間ですぐに出てしまう、飛び出してくる、トイレの後で前足を振る――などがあるので、注意して見る。このほか、遊ぶときは興奮し過ぎる前にやめる、健康管理の配慮など多岐にわたり説明しました。 このほか子猫の殺処分など不幸な命が増えないためと、子宮などの病気の予防やマーキングの改善のために行う不妊去勢手術については、「ぜひしてほしい」。健康管理では、対症療法しかない猫エイズはじめ猫カゼ、猫白血病、猫パルボなど多くの病気についてワクチンなどで予防できるものは対策をし、日ごろの健康管理が大切としました。
飼い主のいない猫による被害も
県の動物愛護センターは「猫の健康手帳」を配布しており、表に飼い主と猫の写真、飼い主の住所、氏名、猫の固体識別番号を記載。裏面には猫の生年月日、呼び名、体重、ウイルス抗体検査の記録、伝染病予防接種などの健康管理情報を記載します。猫の健康管理に生かすとともに、災害などで行方不明や迷子になった場合も見つかった多くの猫と照合することで迅速に発見できるとしています。 この日は飼い主のいない猫の問題ももう一つのテーマに。長野保健福祉事務所の宮川幸二係長は、「最近、猫の人気が高まっており全国でもこれまで犬の方が多かった飼育数に猫の飼育数が迫っている状況。しかし、猫のあちこちでの排尿や、畑を荒らしたり、物置小屋に子猫を産んだ、餌をやったらどんどん猫が集まってきたといった苦情や相談が増えている。猫のやむを得ぬ処分を少しでも減らしたい」と、地域全体でこれらの問題に取り組んでほしいと訴えました。 高橋氏も、飼い主のいない猫による被害を受けている人と、猫の世話をしたい人の間で対立が生じているため、地域住民の手で問題解決に取り組む「地域猫活動」をと提唱。「地域猫活動は、猫のための活動ではなく、猫に困っている人と猫が好きな人がともに気持ちよく暮らすための仕組みづくりのための活動です」と説明しました。 具体例として松本市で2002(平成14)年から取り組んだ地域猫のモデル事業では住民と行政が連携して排せつ物清掃、不妊去勢手術、生息調査などに取り組み、「一時250匹もいた飼い主のいない猫が100頭以下に減った」と報告。 これについて受講者からは「地域の人が飼い主のいない猫に餌をやりながら20頭近く避妊手術をしている例を知っている。行政はこの問題を真剣に考えてほしい。避妊手術などへの助成も含め、地域猫活動に積極的に取り組んでほしい」との発言も。県側は「前向きに取り組みたい」としました。