ケイ素以外のもみ殻由来の化合物原料開発も進めたいと話すケイワート・サイエンスの前ノ園晃社長＝埼玉県川口市

未利用資源の米のもみ殻から化学原料を製造する技術の確立で持続可能な社会を目指した事業展開を進めるケイワート・サイエンス（川口市）。前ノ園晃社長（45）は、今後、新たにケイ素以外のもみ殻由来の化合物の原料開発も進めていきたいと力が入る。 －－創業のきっかけは 「自分の技術で世の中に貢献したいという思いから創業しました。既存企業では、枠組みを超えた挑戦が難しかったため、独自の道を選びました。経営理念は『自然資源を活用し、持続可能な循環型社会の実現に貢献する』ということを掲げています。既存技術を生かしつつ、バイオマスを原料とした新たな化学技術を導入し、異分野の壁を超えて持続可能な未来に向けて挑戦していきます」 －－現在注力している事業内容や課題は 「未利用資源の米のもみ殻から、ケイ素化合物、セルロース、ヘミセルロース、リグニンという4つの基礎原料を抽出し、それを基に化学原料を製造するプロセスの構築に注力しています。もみ殻は、毎年大量に発生し、処分に困る厄介な存在ですが、このバイオマス資源を活用することで、石油に依存した化学原料やエネルギー負荷の大きい製造プロセスを少しでも減らすことを目指しています。大手企業との共同開発を通じて工業原料化を進めています」 －－今に至るご苦労は 「循環型社会の構築は社会的ニーズがあるものの、規模が大きすぎてベンチャー企業が取り組むには理解を得にくい部分がありました。また、最初に手掛けた農業に関する取り組みは利益が出にくいというイメージから協力者も少なかったです。当社の強みは、既存技術を別分野で横展開し、社会実装を早めることですが、新技術を求めるベンチャーの市場では逆に『新しさ』に欠けるとみられ、評価が低く、理解を得にくいこともありました」 －－新たに取り組みたい事業・開発案件や中長期の目標は 「現在、当社ではもみ殻由来のケイ素化合物を中心に新しい原料開発を進めていますが、今後はケイ素以外の原料開発にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。バイオマス原料の開発は長い歴史があるものの、進展が遅れています。これは、バイオマスが成分の複雑さから分離が難しく、石油に比べて均質性や効率的な利用が難しいためです。これらの原料化プロセスを開発し、社会に実装できるよう中長期的に尽力していきます」 －－今後、企業をどう成長させていきたいか。また埼玉企業としての意気込みは