【二階堂ふみ×チェ・ジョンヒョプが好演】ラブコメ『Eye Love You』に感じた『silent』との意外な共通点
火曜ドラマ『Eye Love You』は胸キュンだけじゃない! いま恋愛ドラマに最も求められていることとは? 『Eye Love You』に感じた『silent』には共通点がある!?
最上級の胸キュンセリフが“乱発”
火曜ドラマ『Eye Love You』がとにかく振り切っている……。物語は、目を見るとその人の心の声が聞こえてしまう主人公・侑里(二階堂ふみ)と、韓国人男性・テオ(チェ・ジョンヒョプ)とのラブコメディ。侑里はその能力のため、相手のネガティブな感情にも気づいてしまい、それが怖くてなかなか恋ができないでいる。そんな侑里が、ご飯のデリバリーを通じて知り合った配達員のテオ。彼は心のつぶやきが韓国語であるため、侑里にはその本心が分からない。そこに心地よさを感じていたところ、何と侑里が社長を務めるベンチャー会社に、テオがインターンとして入ってくることに。「公私混同」を嫌う起業仲間の花岡(中川大志)を気にする侑里と、周囲の目なんておかまいなしに侑里に気持ちをどんどんぶつけてくるテオ。さて、二人の恋は一体どうなる!?……というのが第2回までの展開だ。 このストーリーだけ聞くと、「よくあるライトなドタバタラブコメディね」と思った人がほとんどだろう。実際、ドラマはリアリティなんて完全無視状態で、思わず「いやいや……(苦笑)」とツッコみたくなる展開だらけ。視聴者を徹底的に楽しませることを主として作られている印象だ。 たとえばテオによる侑里への、反則胸キュンセリフの連発。「かわいいですね」「会いたかったです」といった基本セリフはもはや挨拶レベルで、毎回、「そこのキョロキョロしているかわいい人ー!」とか、「アナタが誇らしいです」とか、「好きになってほしくてやってます。だから早く僕を好きになって」とか……。どれか1つ言われただけでも気絶というレベルなのに、こんな最上級あざとゼリフが、毎話平均2,3回という頻度で次々と飛び出してくるのだ。この破壊力たるや……。
聞こえないことと、聞こえすぎること
ではこのドラマ、ただ見る人をキュンキュンさせて楽しませて終わり、というものかと言えば、決してそうではない気がする。なぜなら根底に、一本の伝えたいメッセージ軸がしっかりと据えられているのを感じるからだ。それは、昨今の日本の恋愛ドラマにおいて、向き合うべき重要なテーマとして一種のトレンドとなりつつある、“伝える”ということだ。 近いところで、この“伝える”を丁寧に描き視聴者から大きな共感を得たのが、2022年末に放送されたドラマ『silent』だ。実はこの『silent』と『Eye Love You』、テンションこそ正反対ではあるものの、その描き方にはある共通点がある。『silent』は、“耳が聞こえない”というコミュニケーションの壁を通して、互いの気持ちを丁寧に聞き、伝え合うことの大切さを浮き彫りにしていた。一方の『Eye Love You』は、人の気持ちが分かり過ぎてしまう、という正反対の壁を介在させることで、やはり伝えることの大切さを視聴者に考えさせようとしている気がしたのだ。 こう言うと、人の気持ちが聞こえてしまうなら必死で伝え合わなくてもいいんじゃないか?と思ってしまうかもしれない。ただこの能力は、あくまで“伝える”ことの大切さを投げかけるための、入り口に過ぎない。ドラマが描こうとしているのは、その先だ。ご存知のように、主人公の侑里が気になり始めるテオは韓国人だ。いくら心の声が聞こえても、その内容を理解することはできない。しかしテオは、そんな侑里の能力をも凌駕する勢いで、自分の想いをどんどん言葉にしてくるのだ。もはや彼の目を見て心の内を聞く必要などないほどに。そう考えると、もしかしたら侑里は、その言葉が分からないからではなく、テオが心の言葉を全て口にしてくれていることのほうに心地良さを感じたのかもしれない。
PROFILE
書き手 山本奈緒子 Naoko Yamamoto 放送局勤務を経て、フリーライターに。「VOCE」をはじめ、「ViVi」や「with」といった女性誌、週刊誌やWEBマガジンで、タレントインタビュー記事を手がける。また女性の生き方や様々な流行事象を分析した署名記事は、多くの共感を集める。 Edited by 渕 祐貴
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