江戸時代の妖怪で納涼感。市立美術館で「江戸の版本と百鬼夜行絵巻」/大阪
大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町)で、妖怪や幽霊などの絵を集めたコレクション展「江戸の版本と百鬼夜行絵巻」が開かれ、美術愛好家や妖怪ファンらが詰めかけ、納涼感を楽しんでいる。 展示作品は約20点で、展覧会としては小規模ながら、うす暗い会場に、あやしい絵が点々と浮かび上がる様子は、さながら異界ムード。「百鬼夜行絵巻」は江戸後期の絵師、原在中の作品。妖怪に化けた道具たちが収納箱から跳び出し、まちを行進する様子を描いたもの。妖怪たちの躍動感が伝わり、現代の漫画やアニメの原型ともいえる。
怪獣のご先祖やはかないゴーストも
この絵巻の他には、同館が所蔵する多くの版本をひもとき、選び出した妖怪や幽霊の挿絵作品が並ぶ。「金毘羅参詣名所図会」(四)挿絵は、舟や人間を丸ごとのみ込んでしまう巨大な悪魚を、日本(やまと)武尊(たけるのみこと)が退治する場面。悪魚は怖いがどことなくユーモラスで、現代の怪獣たちのご先祖といってもよさそうだ。 「飛騨匠物語」(五)挿絵は葛飾北斎の作品。中央に現れた女性の幽霊だけが、薄く描かれている。はかないゴースト感が物悲しい。 江戸時代後期、出版文化が栄え、北斎などの有名画家が読み本の挿絵を描くようになった。学芸員の秋田達也さんは「絵師たちは一色刷りの制約を受けながらも、幽霊だけを薄くかすかなタッチで描くことで、この世の住人ではない不思議さを物語るなど、多彩な表現手法を駆使していた。親しみやすい百鬼夜行絵巻から入って、江戸の版本の豊かな世界を味わってください」と話している。 開催期間は前期が7月24日まで、後期が同月19日から8月31日まで。午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)、月曜日休館(月曜日が祝日の場合は開館し、翌日休館)。観覧料は一般300円、高大生200円。詳しい問い合わせは同美術館(06・6771・4874)まで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)