ジューク&C-HRはなぜ絶版になったのか? コンパクトSUVの狙い目と競争
トヨタ肝いりの一台だったC-HR、ただユーティリティ重視の身内の登場で存在薄に
トヨタ「C-HR」は2016年に発売が開始されたクルマだ。TNGAプラットフォームを採用したモデルの第2弾で、トヨタの次世代世界戦略車という肝いりの一台でもあった。 ドイツのニュルブルクリンクをはじめとした、世界のあらゆる道路で徹底的な走り込みをし、SUVでありながら高い運動性能を追求するという、異色のモデルだったC-HR。クーペライクな見た目はいかにもスポーティで、それまでのトヨタにはない、かなり斬新なスタイリングは当時話題となった。トヨタお得意のハイブリッドモデルもラインアップされ、初代C-HRは欧州や日本で大ヒットを記録。個性的な外観も、ただクセが強いというより「カッコイイ」という評価に寄っており、デザインの評判がイマイチだった当時のトヨタ車のイメージを覆した。 しかしながら、2020年にはヤリスクロスが、2021年にはカローラクロスが発売され、トヨタのラインアップにおいてコンパクトSUVがC-HRを含め3車種ラインアップされることに。ボディサイズは少しずつ異なるが、居住性やユーティリティを重視してつくられたヤリスクロスとカローラクロスを前に、C-HRは徐々にそのポジションを奪われていき、2023年7月、国内生産が終了に。海外ではすでに2代目モデルが販売されているが、日本市場には導入されていない。 ジュークを日本から撤退させた日産と同様、トヨタも、個性やデザインよりも実用性を重視する日本市場では、C-HRをラインアップから外すことで、ブランド全体の販売戦略を強化しようとする狙いがあったのだろう。
独特な傾向がある日本市場では、積極的かつ柔軟な車種整理が避けられない
現在、欧州に在住している筆者は、しばしば2代目ジュークや2代目C-HRを見かけるが、両モデルとも、実物はめちゃくちゃカッコイイ。ただ、もし日本でラインアップされていたとしても、やはり実用性が高く燃費のいいヤリスクロスやキックスを選ぶ人のほうが多いのではないだろうか。 日本市場は実用性と扱いやすさ、燃費性能を重視する傾向が強い。他のマーケットとは異なる部分があるため、日本市場では、ラインアップを積極的かつ柔軟に整理していくことは避けられず、こうした理由から、ジュークもC-HRも、2代目は日本に導入しないという判断となったのだろう。日本市場には馴染めなかった両モデルだが、今後も世界でその個性を存分に発揮し、活躍してくれるに違いない。