学校にヤギがやってきた 熊本市の託麻南小 思いやり、命の大切さ学ぶ 市内校で減少する動物飼育
動物を飼育しない学校が増える中、熊本市東区の託麻南小の1年生156人が、生活科の授業でヤギの親子を飼育している。発案した坂口静磨教諭(39)は「相手(動物)の気持ちを読み取り、他者を思いやれるようになってほしい」と児童の成長を見守る。 「こっちにおいで」。11月下旬、生活科の授業に臨む1年生が、ヤギの成長過程を観察するため体重計に載せようと、ニンジンを手に恐る恐る誘導した。おとなしく、ムシャムシャと食べる姿に笑顔を浮かべた。 市教育委員会によると、市内の公立小92校のうち、2023年度に動物を飼育したのは6(ウサギ4、ニワトリ2)校。年々減り続け、鳥インフルエンザなど感染症の懸念や長期休暇中の世話が学校の負担になっていることが要因という。 同小でも8年ほど前のウサギを最後に、飼育をやめていた。そんな中、動物との関わりを通して命の大切さを学んでもらおうとの坂口教諭の発案に、菊池市のヤギ農家が協力。11月5日、メスのトモ(4)と双子のアナとエルサ(1)の3頭を来年3月まで有償で借り受けた。
以前使われていた飼育小屋を再利用。1年生が交代で朝と昼に清掃や餌やり、餌の準備を担い、休日は保護者らでつくる「ヤギ部」と一緒に世話をしている。 授業では、ヤギの世話に加え、獣医師から生態や健康についても学習。植田望愛[のあ]さんは「最初は怖かったけど、だんだん慣れてきた。餌をあげると喜んでくれるので楽しい」。 世話をすることで、児童たちが思い通りにならないことに気付いたり、自分本位の行動を見直したりする狙いもある。最初は興奮して大声で追い回していた児童が、ヤギの様子をうかがいながら接するようになるといった変化もあるという。 トモは妊娠しており、来年2月に学校で出産する予定。出産の様子はライブ配信し、全児童が見学する計画だ。坂口教諭は「子ヤギの誕生にも立ち会うことで、児童たちに命の尊さを深く感じてほしい」と話している。(米本充宏)