崩れ始めた半導体株の中でエヌビディアに注目すべき理由
アメリカの証券業界で20年以上にわたって活躍したプロトレーダーが、米国株のチャートの見方を平易に解説する。(最新のドル円相場は こちら ) ■アップトレンドの定義から半導体株の崩れがわかる 米国株市場を牽引してきた半導体株の崩れが目立つようになり、アップトレンドからダウントレンドへ転落する株数が大きく増えています。大ざっぱな判断方法ですが、アップトレンドの定義からまず見てみましょう。 ・株価は50日移動平均線より上にあること ・20日移動平均線は、50日移動平均線より上にあること ・20日移動平均線は上昇していることこちらのチャートは、大型半導体株のETF(上場投資信託)、VanEck Semiconductor ETF (SMH)の日足チャートです。 Aの部分を見てください。水曜日(4月17日)の取引でETF価格は50日移動平均線を割り、アップトレンドの定義である1番目が崩れてしまいました。20日移動平均線は50日移動平均線より上ですから、2番目の定義は満たしています。3番目の定義も崩れています。 Bの部分でわかるように、20日移動平均線は上昇が終わり、水平になっています。もちろん、向こう数日間で回復するかもしれませんが、現時点ではアップトレンドの条件は1つしか満たされていません。 ■楽観視できるとは言いがたい このETFは26銘柄で構成され、資金が最も割り当てられているのはエヌビディア( NVDA )です。次に示したのがトップ5です(出所:ETFドット・コム)。 ・エヌビディア:24.50% ・TSMC(TSM):9.78% ・ブロードコム(AVGO):5.93% ・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD):5.68% ・ASMLホールディング(ASML):5.18%見てのとおり、エヌビディアには24.50%という膨大な資金が配分されていますから、もしエヌビディアが崩れたら、ETFも間違いなく大きく崩れてしまいます。 今のところ、エヌビディアはアップトレンドの条件が2つそろっています。 株価は50日移動平均線より上です(4月17日時点)。しかしAでわかるように、ローソク足は50日移動平均線とほぼ同レベルにありますから、楽観できるような状態ではありません。 20日移動平均線は50日移動平均線より上にありますが、Bの矢印が示すように、20日移動平均線はやや下向きとなっています。言い換えると、現在進行しているのは、アップトレンドにおける一時的な下げであると判断する投資家が多いということでしょう。 ■エヌビディアの動きに注目せざるをえないワケ もう1つ、エヌビディアで興味深いのは、買い圧力と売り圧力を判断するために使われている指標、オン・バランス・ボリューム(OBV)です。 黒い線がオン・バランス・ボリューム、緑は20日移動平均線、赤は50日移動平均線です。矢印の方向でわかるように、オン・バランス・ボリュームは下降して買い圧力の衰えが見えます。 とはいっても、決定的な衰えではありません。20日移動平均線をすでに割ってしまいましたが、株価と同様に、オン・バランス・ボリュームはトレーダーたちが注目の50日移動平均線のテスト中です。 移動平均線を割ることは資金がさらに流出することを意味しますから、エヌビディアへの投資意欲を大きく減退させる結果となります。 SMHは26銘柄で構成されているわけですが、アップトレンドの3条件をすべて備えているのは下記の3つしかありません。 ・TSMC ・マイクロン・テクノロジー(MU) ・クアルコム(QCOM)たったの12%の銘柄が全条件をそろえているという心細い状態です。こんな不安定な状況だけに、半導体セクターのリーダーであるエヌビディアの動きに引き続き注目です。 鎌田 傳(かまだ・つたえ)/カリフォルニア州ロサンゼルス在住の専業投資家。高校卒業後に渡米。大学卒業後、1988年にカリフォルニアのベンチャーキャピタルに入社。ユニオンバンクの証券部や投資情報会社「TradingMarkets.com」のマーケットアナリストなどを経て現在に至る。著書に『 米国株チャート最強の教科書 』(SBクリエイティブ)。「T.Kamada」として情報発信するX(旧Twitter)( @Kamada3 )や ブログ のファンも多い。好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
鎌田 傳