マイワシ大量漂着 道内でなぜ相次ぐ? 背景に暖冬と海水温
道内の日本海や津軽海峡の沿岸で昨年末から、マイワシの大量漂着が相次いでいる。マイワシは低水温では生きられず、冬から春先にかけての生息域は本来、北海道より南に移る。専門家は暖冬で北海道近海に群れが残り、その後の急な海水温低下などで衰弱した可能性を指摘する。 【動画】函館の海岸約1・5キロ イワシなど数千トン漂着 道立総合研究機構中央水試(後志管内余市町)によると、日本近海のマイワシは日本海と太平洋をそれぞれ回遊する二つの大きな群れに分かれ、いずれも9度以上のやや暖かい海域を回遊し生息する。道内では5月中旬から秋ごろ、沖合の巻き網や沿岸の定置網などの漁が行われている。 例年は気温が下がる12月以降に北海道から姿を消すが、この冬は違った。気象庁によると、北海道沿岸の日本海の海水温は、昨年12月~今年1月は平年より2~3度高く、平均9度前後だった。中央水試の山口浩志研究主幹は「水温が下がらず、マイワシが日本海を中心に北海道周辺にとどまった可能性がある」とみる。 実際に昨年12月上旬、津軽海峡に面した函館市戸井地区の海岸で、1キロ以上にわたってマイワシが打ち上げられる事例が発生。群れがマグロなどに追われて浅瀬に近づき、弱って漂着した可能性が指摘された。同月中旬には日本海側の檜山管内江差町、今年1月上旬には同せたな町でも大量漂着が見つかっている。 暖冬でとどまっていたとみられるイワシを次に襲ったのは水温低下だ。2月から一転して9度を下回る日が続いた。3月下旬以降、小樽市銭函の海岸や、留萌市、留萌管内苫前町の港などで大量漂着が発見されている。中央水試の山口研究主幹は「急に水温が低下して弱ったマイワシが、海岸や港に漂着したのではないか」と話す。苫前町沖でニシンの刺し網漁を営む男性は「4月はじめごろから港の近くでも見かけるようになった。今までこんなことはなかった」と驚いた。 マイワシの資源量自体は近年、増加傾向にある。道漁業生産状況(速報値)によると昨年の漁獲量(カタクチイワシなどを含む)は、前年比20%増の28万9千トンで、激減した1992年以降では最多となる見通し。