「ゴジラ×コング 新たなる帝国」ドラマはシンプル、怪獣プロレスと痛快バトルで魅了 シネマプレビュー 新作映画評
公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 ◇ 「ゴジラ×コング 新たなる帝国」 痛快なアクションスペクタクルに仕上がっており、期待以上の出来栄えだった。 「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(2019)や「ゴジラvsコング」(21年)は、秘密組織と米国政府が入り乱れた人間ドラマ部分がもどかしかったが、今回はヒロインの科学者と彼女が引き取った、キングコングと意思疎通できる少女との〝母子〟関係の行方にのみ焦点を置いて、シンプルだ。 あとは怪獣たちのバトルに専念する。コングが暮らす地下空洞に、驚異的な敵が潜んでいることが明らかに。コングは、これを倒すため地上に君臨するゴジラに共闘を求める。キッスの「ラヴィン・ユー・ベイビー」など、いなせで軽快なクラシックロックの劇中歌が気分を盛り上げる。 ただ、ハリウッドの怪獣デザインは相変わらず稚拙だ。今回の新たな敵は、たたずまいも含めて、これじゃあ西部劇か任俠ものか時代劇の悪役だ。 畳みかけるような〝怪獣プロレス〟は痛快だが、これがゴジラである必然性があるのかと思わないでもない。米映画。 26日から全国公開。1時間57分。(健) 「悪は存在しない」 「ドライブ・マイ・カー」で知られる濱口竜介監督の最新作。ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞した。 巧(大美賀均)と娘の花(西川玲)が暮らす自然豊かな長野県水挽町に、開発計画が立ち上がる。環境への影響は大きく、住民らに動揺が広がる。 濱口作品はいつも不思議だ。もともとスタッフだった大美賀らのせりふは棒読みに近い。それがなぜこれほど胸に突き刺さるのか。 石橋英子の音楽と映像も見事に調和。物語は単純な自然保護対開発という図式ではなく、開発側の苦悩も描かれる。悪は存在せず、無数の事情が人々を駆り立てているのだ。結末のやや唐突な展開も魅力の一つ。 26日から全国順次公開。1時間46分。(耕)