【イベントレポート】北野武、鳴り止まない喝采を自ら制止 ヴェネツィア国際映画祭で新作に手応え
北野武が監督・脚本・主演を担ったAmazon Original映画「Broken Rage」のワールドプレミアが、第81回ヴェネツィア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門で日本時間9月7日に行われ、北野、浅野忠信、大森南朋が出席した。 【画像】レッドカーペットで手を振る北野武 Amazon MGM スタジオ製作の「Broken Rage」は、“暴力映画におけるお笑い”をテーマに、前半では警察とヤクザの間で板挟みになった殺し屋が生き残りを懸けて奮闘する骨太のクライムアクション、後半では前半と同じ物語をなぞるコメディタッチのセルフパロディが繰り広げられる。主人公の殺し屋・ねずみをビートたけしが演じ、浅野と大森は麻薬捜査の覆面捜査官としてねずみに協力させようとする刑事に扮した。 世界初上映に先立って行われた公式記者会見には、世界中から100名以上の報道関係者が詰めかけた。北野は「劇場の人向けではなくテレビ画面で観る人に向けて、今までやってみたかったことをテストしてみた。気楽に撮ってみたら、まさかこんな(ヴェネツィアに来る)ことになるとは。もっと真剣にやるべきだったな」と“北野節”全開でコメント。本編は62分の尺の中で2部構成となっており、「実際にインターネットは意外に規制が外れて『よくこんな悪口が言えるな』と楽しく観ているが、スピード感に飲まれているのか、(本作の編集にあたり)映画の“間”じゃなくてインターネットの“間”になった」と実験的な作品になったことを明かす。そして「暴力もお笑いも感情を揺さぶるもの。人に対する衝撃という意味では、お笑いも暴力である。暴力的なものなのか、愛なのか、日常的なものなのか、観る人によって違うのが映画や絵画などのアート。人が気付いていないことを『これが暴力だ、これが愛だ』とピックアップするのが大事なんだと思う」と本作のテーマに触れた。 浅野は「ほかの映画監督とは全然違う要求をされる。役に対して応えていかないと北野監督が認めてくれないとわかったので、役に対する取り組み方が変わったなと。前作の『首』にしても、今回の『Broken Rage』にしても、常に新しいことにチャレンジしている姿勢も含めて、俳優として学ぶことが多かった」と北野との仕事について語る。大森も「武さんの横にずっといることができて、浅野くんと一緒にお芝居できて、撮影の日々は本当に毎日楽しかったです。(後半のパロディパートの撮影では)生意気ながらも『武さんにもちょっと笑ってほしい』という気持ちで撮影に挑んだんですけど、なかなかできなくて苦労しました」と述懐した。北野が「この2人は俺が将来すごく期待している人たち。すごく一生懸命にやっていただいて、いずれは映画界を引っ張っていく日本の役者さんだと思ってますんで、皆さんも心に留めておいてください」と海外メディアに向けて呼びかけると、会場からは拍手が。記者会見の終了後には、北野が記者たちからサイン攻めに遭う一幕もあり、レッドカーペットでも記者たちの熱烈な“キタノコール”に迎えられた。 公式上映が行われたメイン会場のSALA GRANDEは、北野の新作を待ち詫びたファンで1032席が埋め尽くされた。上映中は笑いと拍手が巻き起こり、上映後のスタンディングオベーションが6分を過ぎたところで北野は照れ臭そうに制止。これまでもヴェネツィア国際映画祭に参加してきた北野だが「『HANA-BI』のときよりもスタンディングオベーションが長くて、面積とか体積で言えば今回のが一番」と手応えをのぞかせ、「『Broken Rage』はあまりにも映画らしくない、冒険した作品なので『大丈夫かな?』と思ったけど、反応がすごくよかった」と満足げに感想を述べる。また「ヴェネツィア国際映画祭は、映画では無名だった武にグランプリをくれたので、自分たちが育てたという感覚を持ってくれてるんじゃない? ヴェネツィアでグランプリを獲っても、あまり進化のないことをやっていたらファンに飽きられちゃうから、またチャレンジしてるところを見せないと。1本1本、ヴェネツィアのファンがこの映画を観たらどう思うか?ということも意識しながら作ってます」と力説した。 「Broken Rage」はPrime Video(プライムビデオ)では2025年に世界配信される予定。北野、浅野、大森のほか、中村獅童、白竜、仁科貴、宇野祥平、國本鍾建、馬場園梓、長谷川雅紀(錦鯉)、矢野聖人、佳久創、前田志良(ビコーン!)、秋山準、鈴木もぐら(空気階段)、劇団ひとりもキャストに名を連ねる。 (c)2024 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.