「どれほど怖いかは言い表せない」性別騒動に揺れた女子ボクサーが胸中を激白 世界からの批判に「毎晩、部屋で泣いた」
世界中からの誹謗中傷の的となった当事者は傷ついていた。パリ五輪のボクシング女子66キロ級で金メダルを獲得したイマネ・ケリフは、母国のニュース局『El Bilad』に出演。大会期間中に受けた批判に対する自らの考えを正直に訴えた。 大会前から批判は止まらなかった。 ケリフは、女子57キロ級に出場したリン・ユーチン(台湾)とともに昨年に国際ボクシング協会(IBA)が世界選手権前に実施した性別適格検査で「XY」染色体が見つかったとして不合格となったことが判明。今大会の参加は「彼女たちは女性として疑う余地はない」とした国際オリンピック連盟によって認可されたものの、安全性の面で不安の声、そして誹謗中傷を含む批判を受けていた。 ケリフはパリ五輪の2回戦でイタリアのアンジェラ・カリーニ戦で、相手が46秒で棄権。文字通りの快勝劇を飾ったのだが、この試合結果も批判の声を加速させる要因に。イタリアのジョルジャ・メローニ首相が「男性の遺伝的特徴を持つ選手は、女子競技に参加すべきではないと思います。誰かを差別したいからではなく、女性選手が平等に競技できる権利を守るためです」と声明を出したほか、ハリー・ポッターの著者J・K・ローリング氏らもX上で厳しい意見を寄せていた。 そうした“逆風”をはねのけ、金メダリストとなった。しかし、ケリフは「とても傷ついた」と大会期間中の騒動を回想。「多くの政治家やアスリート、アーティスト、そしてイーロン・マスクやドナルド・トランプといった有名人が批判をしていた。これがどれほど怖かったか言葉では言い表せない」と複雑な胸中を明かした。 「期間中は毎晩、私は部屋に行ってから泣いた。心がとても痛くなったような感じで、計り知れない不公平さをただただ感じていた。部屋で泣いた後、私は何事もなかったかのように笑顔で出て行くようにしていた」 さらに「色んな政治家たちが私を不当に扱った。彼らには私をトランスジェンダーと呼ぶ権利はない。そういう発言は私と、私の家族の名誉、そしてアルジェリアとアラブ世界全体にとって侮辱」と力強く訴えたケリフは、こうも続けている。 「本当に予想していなかった困難があった。私が出場を続けることで『なぜ世界中の大物政治家が騒ぎ立てたのか』と言われるんじゃないかと怖さがあった。だが、私を助けてくれたセラピストのおかげで乗り越えることができた。世界中がイマネ・ケリフの女性らしさ、勇気、そして意志を知っていることを神に感謝したい」 今後もキャリアを続けていく予定だというケリフ。その動静に引き続き世界の注目が集まりそうだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]
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