これ、ゆうちょ銀行だけ?「故人の預金残高」を《他銀行》に移動させる“まさかの方法”【司法書士が解説】
ゆうちょ銀行における相続手続き
続いて、ゆうちょ銀行における相続手続きの流れを見ていきましょう。 <ゆうちょ銀行の相続手続き> (1)窓口に相続確認表を提出(郵送不可) (2)ゆうちょ銀行からの必要書類の案内が届く (3)必要書類を提出(郵送不可) (4)被相続人の口座解約後、相続払戻金を受け取る ゆうちょ銀行ではまず、相続確認表というゆうちょ銀行指定の書類を窓口に提出します。郵送不可ですので、必ず窓口に行かなければなりません。ゆうちょ銀行の相続手続きには「支店」という概念がないので、最寄りのゆうちょ銀行の窓口で大丈夫です。 すると、ゆうちょ銀行から約1~2週間で「必要書類のご案内」が届きますので、これに従って記入するとともに、必要書類を用意・提出します。提出する際も郵送不可ですので、また最寄りのゆうちょ銀行の窓口に行ってください。 書類を提出後、被相続人の口座が解約され、約1~2週間で相続払戻金を受け取ることが出きます。
ほかの金融機関なら「必要書類を投函して終わり」だが…
以上からわかるように、ゆうちょ銀行の相続手続きでは、少なくとも2回は窓口に直接行く必要があります。 「うちは近所にゆうちょ銀行があるから、窓口に行くだけならそれほど手間ではない」と感じる方もいるかもしれません。しかし窓口は基本的に平日しか開いておらず、営業時間も決まっています。平日働いている人などの場合は、ゆうちょ銀行の営業時間に合わせて休みを取ることになるでしょう。 また、窓口に行って帰るまでの時間や、行き来にかかる交通費、窓口で書類チェックを受ける時間(人手が足りなかったり、混んでいたりなどすれば1時間待ちもザラです)などについても考えてみてください。 もし必要書類が郵送OKだったなら「投函して終わり」です。上述のようなコストはかからず、「銀行側に届き次第チェックしておいてください」で済むのです。
ゆうちょ銀行では、相続払戻金を他の金融機関に送金できない
最も気になるのは「払戻金の取り扱い」についてです。筆者がXに投稿したのも、同業者の間で不満が多く挙がったのも、この部分です。 実はゆうちょ銀行では、解約した口座に残っていたお金は、ゆうちょ銀行の口座にしか送金できません。同じ金融機関のなかでしか送金できないという仕様は、少なくとも筆者の知る限りではゆうちょ銀行だけです。筆者が司法書士として関わった他の金融機関では、解約後、その口座の残金を他の金融機関に送金することができました。 相続人がゆうちょ銀行に口座を持っていれば、そのゆうちょ口座に相続払戻金を送金することができます。とはいえ、自身のゆうちょ口座がない(新規開設する予定もない)場合や、ゆうちょ口座はあっても他の金融機関の口座で受け取りたい場合などもあるでしょう。 このような場合は、ゆうちょ銀行でもらえる払戻証書(小切手のようなもの)を窓口で現金化し、自分自身で別の金融機関の口座へ入金することになります(※)。多額の現金を持って移動するわけですから、非常に危険です(※司法書士などが手続きを代理する場合は「預り金口座」を作り、窓口で現金化した残金をいったんそこへ入金したのち、相続人が指定する口座に送金します)。 なぜゆうちょ銀行では、解約した口座の残金を、ゆうちょ銀行以外の口座に送金できないのか。筆者はその理由を知りませんが、他の金融機関では「できる手続き」であるだけに、謎ルールだと感じます。今後改善されたら嬉しいですね。
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